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大谷翔平が「MLBの新たな歴史を作った」と断言できる2つの理由《21世紀で最大の仕事量+増える二刀流フォロワー》 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byNanae Suzuki

posted2021/10/25 17:10

大谷翔平が「MLBの新たな歴史を作った」と断言できる2つの理由《21世紀で最大の仕事量+増える二刀流フォロワー》<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

二刀流としてフルシーズンを戦い抜いた大谷翔平。その偉業は、MLBに新たな価値観を提示したという意義もある

ザック・ウィーラー(フィリーズ)
対戦打者849+打席73=922
 投:32試785打169安16本72失点4盗46四247三 率.215
(32試14勝10敗213.1回 率2.78)
 打:32試68打11安0本3打点0盗0四39三 率.162

アダム・ウェインライト(カージナルス)
対戦打者828+打席74=902
 投:32試765打168安21本72失点3盗50四174三 率.220
(32試17勝7敗206.1回 率3.05)
 打:33試57打7安0本1打点0盗3四25三 率.123

 ナショナル・リーグの投手は打席に立つので打撃成績がついてくる。そういう意味では「二刀流」ではある。もちろん、ほとんどが登板時の打席だけだが、ウェインライトは7月23日のレッズ戦で代打として打席に立って三振している。

もっとも打席に立った強打者と比べても……

 では“一刀流”の打者はどうか。今季フル出場したアスレチックスのマーカス・セミエンの724打席が最高である。

 打:162試652打173安45本102打点15盗66四146三 率.265

 セミエンの本塁打、打点は大谷翔平とほぼ同じだ。大谷はこれに加えて先発で130イニングも投げていたわけだ。

 昔のMLBでは300イニング以上投げるピッチャーが数多くいた。そのため当然、対戦打者数も膨大なものになった。20世紀以降の投手では1903年にニューヨーク・ジャイアンツのジョー・マクギニティが対戦打者1786(434イニング)を記録しているが、21世紀以降では2003年、ブルージェイズのロイ・ハラデーの1071(266イニング)が最多だ。ちなみにこの年のハラデーは9打席。対戦打者+打席は1080だった。

 単純比較はできないが、今年の大谷の仕事量は《21世紀以降最大》だという見方もできるだろう。

成績で匹敵するのはベーブ・ルース、だが

 大谷の成績に匹敵するのは――やはりベーブ・ルースということになる。

 <1918年> 対戦打者660+打席382=1042
 投:20試582打125安1本51失点12盗49四40三 率.215
(20試13勝7敗166.1回 率2.22)
 打:95試317打95安11本66打点6盗58四58三 率.300

 <1919年> 対戦打者570+打席543=1113
 投:17試504打148安2本59失点4盗58四30三 率.294
(17試9勝5敗133.1回 率2.97)
 打:130試432打139安29本114打点7盗101四58三 率.322

 仕事量という面で見ても、大谷翔平はベーブ・ルース以来の存在だということになる。ただ、個人的にはベーブ・ルースとの比較は「もうそろそろいいかな」との思いもある。

【次ページ】 ルースも川上哲治も二刀流は“過渡期の産物”だった

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