濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
大日本・新エースの“覚悟” ドリュー・パーカーのデスマッチ愛「痛いけど頑張る、まだやれる…」野村卓矢は「ストロングBJが最強だ」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/10/24 11:00
大日本プロレス新世代のエース、ドリュー・パーカー(右、第2代GCWウルトラバイオレント王者)と野村卓矢(左、BJW認定ストロングヘビー級王者)
「トップに立って、言いたいことが言えるようになった」
鈴木と阿部からは強さだけでなくプロレスの幅の広さも学んだ。
「昔の自分は格闘色の強いプロレスがやりたくて、ド直球しか投げないようなスタイル。でも2人はそうじゃないんですよ。笑いの要素も出せるしいろんなことができる。僕も今は少し球種が増えたかなと」
観客にどう見せるか、どう伝えるか。そうした意識も強くなった。チャンピオンになる少し前には「今のストロングには殺伐さが足りない」。ベルトを巻くと「大日本のストロングが最強だと証明したい」、「(関本には)最強ロードの踏み台になってもらう」と言い放った。寡黙な選手かと思っていたが、実はチャンピオンになるまではと我慢していた部分もあったという。
「トップに立ったので、ちゃんと言いたいことが言えるようになりましたね。ストロングBJが最強だっていうのは、チャンピオンが言わなきゃいけないことなんで」
初防衛戦で見せた、流血しながらのドラゴンスープレックス
初防衛戦、関本は序盤のグラウンドから「さすが」と言いたくなるような攻めを見せた。“マッスルモンスター”が繰り出せば、ヘッドロックやキャメルクラッチも必殺技になる。もちろん打撃の重さは言わずもがな。
だが野村は人差し指を振って「効いてない」とアピール。エルボー、蹴りを返し、頭突きを叩き込む。渾身の一撃で、打った野村の額が割れた。フィニッシュは流血しながらのドラゴンスープレックスだった。その直前には関本の顔をフルスイングで張り飛ばした。
両者が出した技の種類は少なかったが、観客は真っ向勝負のプロレスを堪能した。多くのファンがストロングBJに期待するものが、この試合には詰まっていた。正面突破で勝ったチャンピオンは「関本さん、俺を強くしてくれてありがとうございました」と頭を下げた。
「どの団体からも恐れられる存在になりたい」
MMA(総合格闘技)が競技として確立した時代。インターネットで検索すれば那須川天心も朝倉兄弟も武尊も見ることができる。階級別の闘いが当たり前にもなった。一方、プロレスはエンターテインメント性が欠かせない。観客に見せて、伝えることが重要なジャンルだ。そういう中で“プロレスラーならではの強さ”をどう獲得し、いかに表現するか。そこに野村のテーマがある。
「プロレスと格闘技は、近くで見ると全然違う。でも目線を引いて、大きく見ると同じ枠に入るものだと思うんですよね」
今はまだうまく言葉にできない。しかし“プロレスラーならではの強さ”があると野村は確信している。それを感じたからプロレスラーになったのだ。
「その強さを他の団体にも示していきたい。前は“関本幻想”があったわけじゃないですか。練習生の頃、関係者が“今プロレス界で一番強いのは関本だね”と話していて、そんな人がいる団体に入れたのが嬉しかった。僕は関本さんみたいな圧倒的なデカさ、パワーはないですけど、自分もそう思われないといけないなと。どの団体からも恐れられる存在になりたい」
デスマッチとストロング。大日本プロレスの両輪は、ともに変化しようとしている。今はその変化のダイナミックさを客席で体感できる時期と言っていい。3年後、5年後に「あの時の大日本を見ていてよかった」と思えるはずだ。その中心に、ドリューと野村がいる。