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“代表帰り”の冨安健洋がアーセナルレジェンドの敵将ビエラに狙われた?「良い瞬間もあれば悪い瞬間も…」課題は〈偽SB〉か
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byAFLO
posted2021/10/21 17:02
アルテタ監督から指示を受ける冨安とティアニー。両SBのポジショニングは攻守におけるアーセナルの生命線だ
得点から6分後の前半14分。足を痛めたオーバメヤンの治療で試合が止まると、ビエラ監督は左FWのオドソンヌ・エドゥアールをテクニカルエリアに呼び寄せて指示を出した。その後、フランス人FWは、CFのクリスティアン・ベンテケに「互いの距離を縮めるように」とジェスチャーで指示を伝達。ここから、試合の流れが大きく変わった。
4−3−3の左FWとして先発したエドゥアールは、それまでタッチライン際でボールを受ける場面が多かった。ところが、この指示を境に、左サイドから中央部に流れるランが激増し、中央寄りの位置でパスを受けるようになった。そして、大外のアタックは、サイドバックのティリック・ミッチェルの攻撃参加で補填。つまり、「大外にミッチェル」、「インサイドにエドゥアール」の形で攻撃を構築するようになったのだ。
冨安の右サイドを攻略した敵将ビエラ
困ったのは冨安だった。中央に流れていく左FWのエドゥアールについていけば、タッチライン際を駆け上がるミッチェルにパスを出される。一方、ミッチェルにつけば、今度は冨安の背後に流れるエドゥアールにパスを通された。要するに、冨安は1対2の数的不利の状況を作られるようになった。
冨安のいる右サイドをうまく活用し始めたクリスタルパレスは、ここから攻勢に。右サイドを起点に敵陣に押し込むようになった。他方、アーセナルは自陣で守備にまわる展開に。22分にはアルテタ監督が右FWのペペに「自陣に戻って守備にまわるように」と大声とジェスチャーで指示を出していたが、攻撃志向の強いコートジボワール代表FWにはミッチェルを離してしまう場面が散見された。前半終了時のボールポゼッションは、クリスタルパレスが57%を記録。ビエラ監督によるひとつの戦術変更で、試合の流れは一気にクリスタルパレスへ傾いた。
現役時代、ビエラはセントラルMFとして試合の流れを的確に読むプレーを得意としていた。このあたりの読みの良さが監督となった今も変わっていないのは、さすがとしか言いようがないだろう。
冨安のプレーにフォーカスすれば、守備対応に大きな問題はなかった。前半3分には日本代表の背後にスルーパスを出されたが、自慢のスピードで追いついた。ボールを奪い返すと、場内から大きな拍手が起きたほどだ。
前半のアディショナルタイムには、逆サイドからのクロスボールに反応。体をうまく入れてベンテケにダイビングヘッドをさせず、試合実況でも「よい守備」と褒められた。システム上のミスマッチに苦戦する場面はあったものの、1対1の局面で突破されることはなく、冨安の守備に難は見えなかった。