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長嶋一茂「大野豊のボールなんて全然見えない」、増渕竜義「ずっとプロ野球選手でいたかった」…ドラ1選手たちの“現実”とは
posted2021/10/13 11:03
text by
元永知宏Tomohiro Motonaga
photograph by
Sankei Shimbun
怪物や天才が集まるプロ野球でも、ドラフト1位は特別な存在だ。だからこそ、チームの誰よりも注目され、期待される。
しかし、そのプレッシャーに押しつぶされ、成績を残せないまま、ある者は数年で他球団にトレードに出され、ある者は戦力外通告を受ける。自分の能力のなさに絶望し、故障に苦しみ、誰かの言葉に傷つき、人間関係に悩む……。
武田一浩、小宮山悟…80年代後半、六大学→プロ入りの投手たち
筆者が立教大学野球部に入部したのは86年4月。東京六大学リーグにはのちにプロ野球で活躍するドラフト1位がたくさんいた。エースたちのプロ野球での通算成績を挙げてみよう。
猪俣隆(法政→86年ドラフト阪神1位) 43勝63敗3セーブ、防御率3.68
武田一浩(明治→87年ドラフト日本ハム1位) 89勝99敗31セーブ、防御率3.92
小宮山悟(早稲田→89年ドラフトロッテ1位)117勝141敗4セーブ、防御率3.71
葛西稔(法政→89年ドラフト阪神1位) 36勝40敗29セーブ、防御率3.59
高村祐(法政→91年ドラフト近鉄1位) 83勝102敗9セーブ、防御率4.31
名球会入りするほどの大投手はいなかったが、10年以上、プロ野球で投げ続けた。筆者と同学年の小宮山はメジャーリーグ(メッツ)でもプレイし、44歳でユニフォームを脱いだ。
しかし、東京六大学で活躍していた野手のドラ1は、プロでレギュラーをつかめなかった。大学時代に通算11本塁打を放った長嶋一茂(立教→87年ドラフトヤクルト1位)はプロ9年間で161安打、18本塁打、打率.210という成績。東京六大学で通算打率.356、17本塁打の大森剛(慶應→89年ドラフト巨人1位)は8年間で29安打、5本塁打、打率.149に終わっている。
長嶋一茂「大野(豊)のボールなんて、全然見えない」
投手がプロで活躍の場をつかんだのに、打者の成績はなぜ振るわなかったのか? 大学4年間で一度もリーグ戦に出場できなかった筆者に、その理由はわからなかった。ドラフト1位だけでなく、プロ野球から指名される選手たちは、アマチュア時代はただただすごかった! からだ。