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落馬事故で大ケガ「ああ、もうクロノジェネシスには乗れない…」最強牝馬を一番知る騎手が明かす《彼女の意外な性格》
text by
軍土門隼夫Hayao Gundomon
photograph byPhotostud
posted2021/10/08 17:04
第100回凱旋門賞に出走したクロノジェネシス。鞍上はオイシン・マーフィー、左端が斉藤崇史調教師。
来年3月までには引退する
ドバイシーマクラシックは直線、3頭による追い比べとなった。激戦の末、フランスダービー馬ミシュリフが勝利し、クロノジェネシスはクビ差2着、さらにクビ差3着が同世代のオークス馬ラヴズオンリーユーだった。ちなみにラヴズオンリーユーの鞍上はマーフィーだった。
北村にとって、このドバイシーマクラシックは34歳にして初めての海外での騎乗だった。
「すごく刺激を受けました。直線が長くて、道中は淡々としているんですが、最後に向かって長く脚を使っていくレースで、日本にはない流れだなと思いました。スタミナ、排気量を全部使い切るようなイメージとでもいうか。僕も勉強になりましたし、クロノジェネシスにもいい経験になったはずです」
ただ、いい経験になったという思いと同じくらい、勝てなかった悔しさは大きかった。
「勝った馬は強かったですけど、だからこそ悔しかったです。クロノジェネシスと凱旋門賞を勝つためにも、僕自身がもっと進化しなくてはと感じましたし、帰国してからもそういう思いで乗っていました。でも、そこで落馬してしまったんです」
クロノジェネシスは所属クラブの規定により、遅くとも6歳を迎える来年3月までには引退する。北村が乗ることはもうない。
「怪我の前よりも進化した、成長した自分になって戻ってきたい。今はそういう気持ちで頑張っています。11月にCTを撮るので、そこで復帰への目処はある程度は立つんじゃないかと思います。まずは背骨に8本入ったボルトが取れるのがいつになるか。僕の中では来年1月、でも医者はもっと後にしたいでしょうね。くっついてなかったら、たいへんですから」
クロノジェネシスのような馬に、また出会うために。彼女と過ごした日々を無駄にしないためにも。復帰へ向けた北村の戦いは、今日も続いている。
Number最新号では【名牝たちの輝き】クロノジェネシス/グランアレグリアを掲載しています。是非ご覧ください。