“いい試合”をした先にあるもの

　スターダムの、というよりプロレスの主流はやはり“激しい攻防”だ。気力も体力も使い切るような全力ファイト。なつぽいも当然そこで勝負するつもりはあるのだが、同時に他の武器も大事にしたいと思っている。

　そんななつぽいに、筆者が聞いたある男子選手の言葉を伝えてみた。こんな言葉だ。

「みんなが言う“いい試合”って、激しく技を出し合ってカウント2.9で何回も返すような試合でしょ。俺はそれだけがいい試合だとは思わない。もっといろんなパターンがあるはずだろ、いい試合って」

　すっごい分かります、となつぽい。

「みんな、いい試合をしようとしてるんです、当たり前ですけど。その中で、私は他の人がやってない形のいい試合がしたい。だって強い人も上手い人も大きい人もたくさんいるんですから、スターダムには」

　“今のスターダムの基準”だけを追っていてはいけない。それは競争の激しいスターダムで埋もれないために必要なことだとなつぽいは言う。

「カイリさんや麻優さんは、どんな試合でも誰が相手でも自分独自の色が出るんですよね。私がそうなるには2人のマネをしてはダメで、自分の色を見つけないと」

　自分ならではの“いい試合”とは何か。それを模索しているのだと思うと、なつぽいの試合がさらに興味深く見えてくる。10月3日の名古屋大会ではアーティスト・オブ・スターダム（6人タッグ）王座を獲得した。パートナーはひめかと舞華。10月9日のビッグマッチ、大阪城ホール大会で早くも初防衛戦が待っている。

　なつぽいがチームでベルトを巻くのはキャリア初のこと。嫉妬深くてイタズラ好きな妖精は、防衛ロードの中で新たな自分、新たな“いい試合”の形を発見するかもしれない。

（撮影＝杉山拓也）

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