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スターダムの“妖精”なつぽいが夢見る新たなベルトと“自分だけのプロレス”「性格悪いも褒め言葉です」《特別グラビア+インタビュー》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/10/07 11:02
“ハイスピード・フェアリー”と呼ばれるスターダムのなつぽい。アーティスト・オブ・スターダム戴冠に続き、次なる目標も。
アイドル人気を持ちながらも、東京女子プロレスでは“実力派”として遇され、タイトルを獲得。伊藤麻希からライバル視されたりもした。スターダムに移ったのは、さらにプロレスに集中するためだった。どうせやるなら日本一の団体で、と思った。
今のスターダムは自分よりキャリアの浅い選手も多い。能力が高く個性が強く層も厚い集団でどう自分をアピールするかが課題になった。
「去年、スターダムに来たばかりの私は“普通”だったと思うんですよ。普通って一番きついんです。キャリアがある分“それなりにできるんだろうな”と思われている面もあるし、でも“外から来てどんだけできるの?”という目もあった。どっちつかずじゃないですけど、そこが難しかったですね。ド新人のほうがまだいいんです。とにかくガムシャラにやるしかないし、それをお客さんが評価してくれるので」
「自分のすべてを曝け出していかなくちゃな」
転機になったのは今年3月、日本武道館大会でAZMを下しハイスピード王座を獲得したことだ。名前の通り動きが速くテクニカルな選手が争うタイトルで、なつぽいにとっても最初の目標だった。本人は「何者でもなかった自分が、ベルトによって価値を作ってもらった」と振り返る。
ハイスピード王座を目標にしたのは、小柄で動きが速い自分に合っていたからというだけではない。ドンナ・デル・モンドの中で唯一、このベルトに向いているという判断もあった。ジュリアと朱里はトップ戦線の選手。舞華とひめかは大型ファイターだからハイスピードを狙うタイプではなかった。なつぽいは最初から自分の立ち位置、役割に敏感だったわけだ。それもスターダムで生き残り、目立っていくためだった。
目立つためには個性を打ち出し、感情をリングに叩きつけるのが一番いいと考えた。
「スターダムにはキャリアに関係なく強い選手がたくさんいて、大きい選手も技術がある選手もいる。ハイスピードのベルトを巻きましたけど、飛べる選手、動ける選手は私だけじゃない。“私だって飛べるし動ける!”という感覚では埋もれてしまうだけだなって。じゃあどうやってスターダムで登っていくかって考えた時に、カッコつけるのではなく、自分のすべてを曝け出していかなくちゃなって思いました。試合が面白くなるためなら、“性格悪い”も褒め言葉だと思ってます」