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「挑戦を終わらせる覚悟がない」岡崎慎司35歳がスペイン2部・カルタヘナに移籍した“本当の理由”「佐藤由紀彦さんに憧れて…」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2021/09/13 17:20
ウエスカからスペイン2部のカルタヘナへと移籍した岡崎慎司。欧州での戦いを続ける彼の目指す先は…
自分が活きる場所を求めて移籍を重ねた佐藤は、競争に身を投じ勝負し続けた。勝負事だから負けることもあるが、それを恐れない。J1優勝も残留争いも経験し、最後は地方クラブのJリーグ入りをけん引。自身もJリーグに復帰を果たし、かつての高校選手権のアイドルMFは泥臭く20年のキャリアを走り切った。
「由紀彦さんには由紀彦さんの理由や想い、そして縁があって、その道を歩んできたと思います。でもその姿に憧れた。現役のキャリアはいつ途絶えてもおかしくない。今回カルタヘナへの移籍が決まり、それを繋ぐことができた。僕がここで活躍すれば、もう一度スペイン1部リーグでプレーすることも可能。そのチャンスを手にできた」
「悠長なことは言っていられない」
9月3日にスペインに到着し、翌4日には練習に参加。試合も観戦している。
「試合を見ながら、チームのサッカーに触れて、攻撃の流れもなんとなくつかめた。あの選手がボールを持ったら、こうやって動こうとか、ほかの選手と違いを示すために何をすべきかといった具体的なイメージが生まれて、スイッチが入った」
カルタヘナの2部残留をけん引したのは、長くベティスでプレーした40歳のルベン・カストロだ。身長169センチと小柄ながらも数多くのクラブでゴールを重ねてきた。
「2部で点を獲っている選手のなかにはベテランも多い。やっぱり動き方を知っていて、勝負所に顔が出せる選手。そういう選手と共存しながら、競争に割って入っていきたい」と岡崎。
現場復帰を果たした今、「悠長なことは言っていられない」とも話す。すでにシーズンが始まったチームへの加入には困難も少なくないだろう。けれど、求めた戦場に立てた喜びは大きい。
コンタクトプレーをしない自主練は、渇望を生み出したに違いない。コンディションは良いが、ゲーム勘への不安がないわけでもない。けれど、乾いたままだった欲を満たそうとするエネルギーが湧いているはずだ。
「それがサッカー選手。だから楽しいんですよ」
以前、2022年のワールドカップカタール大会出場も視野にあると話していた。それを果たすには、2019-2020シーズン、ウエスカで戦ったスペイン2部での12得点を上回る結果が求められるだろう。そしてそれは、ワールドカップだけでなく、自身のキャリアを繋ぐうえでも重要なタスクだ。
そこに道が見えなくとも、草をかき分け、道を探し、切り拓いていくしかない。
「それがサッカー選手。だから楽しいんですよ」
サラリーを考えれば、Jリーグ復帰を含めて、可能性はあったはず。しかし、それでは満たされないものがある。それをカルタヘナで得られるかは、誰にもわからない。ただ、「やれる」と信じる力がある限り、挑戦は諦められない。