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「メジャーで1番戸惑った」松井秀喜やイチロー、大谷翔平に続いて筒香嘉智も乗り越えた、 日米で決定的に違う《投手の「間」》とは?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAFP/JIJI PRESS
posted2021/09/10 17:01
パイレーツに移籍後、ホームランを量産している筒香
そうしてマイナーの投手を相手に日本とは違うアメリカでプレーする投手たちの“間”を改めて学び、そこで対応できる形に自分のフォームを進化させた。オクラホマシティでは打率2割5分7厘で10本塁打と結果も出始めていた。
そこにチームを解体し、来季以降の再建を目指すパイレーツが目をつけて、お金のかからない当面の戦力として獲得したわけだが、そのチャンスを物にして来季以降への道を作ったのは筒香自身であったわけである。
筒香から来た一通のメール
以前にこのコラムで書いたが、筒香にとっては日本での実績や評価は関係ない。メジャーでプレーすることを目標にする1人の選手であり、だからマイナーに落ちることも、決して敗北ではない。若いマイナーの選手やドミニカ共和国や中南米出身の選手たちと同じように、メジャーに這い上がっていくことを目標に、自分のプレーを築き上げていくことだけしか見ていない。
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「自分らしいストーリーです!」
パイレーツへの移籍が決まった直後に、筒香からきたメールにはこう記されていた。
もちろんこの先もすんなりと順風満帆な道が広がっているなどと思っていないはずである。このオフにはフリーとなるため、来季の契約もどうなるかはまだ分からない。
オクラホマシティを自由契約になったとき、日本球界復帰を望む声があったのは確かだ。ただ、筒香本人の中にいまは、まだその選択肢は全くないようである。万が一、来季の契約がマイナーでも、おそらくそのままアメリカに残ってプレーを続けてメジャーを目指すことになるのだろう。
時間はかかっても、少しずつ自分の野球をアップデートしていって目標を達成する。
日本だけではなく全米を席巻する大谷翔平のストーリーも楽しい。ただ、それとは対極のこの筒香らしいストーリーもまた、ファンにとって心を揺さぶるものとなっている。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。