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第100回甲子園ヒーローに「プロ3年目の明暗」が出始めた? “吉田輝星や根尾昂より先に好成績”の日本ハム野村佑希〈週刊セパ記録〉
posted2021/09/07 06:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Hideki Sugiyama/Kyodo News
各球団の残り試合数は40試合を割り込んできた。パ・リーグでは長く首位をキープしてきたオリックスがロッテにその座を明け渡した。
週間ではオリックスは1勝4敗1分、チーム防御率は7.92、投手陣が崩壊したのが大きい。それに加えてチームの絶対的な主軸の吉田正尚が5日、左太もも裏の筋損傷で登録抹消された。
吉田は2017年に腰痛を発症して開幕から長期離脱したものの、10月7日の楽天戦から4年以上、512試合連続出場を続けていた。しかしこれもストップした。
今季の吉田は3番に座って殊勲打を連発した。特に味方打線が攻めあぐねている投手を打ち崩して、攻撃の先鞭をつけることが多かった。吉田に続く打者に「この投手は、この球をこう打つんだ」と示しているような打撃を見せたものだ。
9月5日時点では吉田は打率.338、2位の西武・森友哉に1分1厘の差をつけて2年連続首位打者に向けて走っていた。
積み上げ型の本塁打や打点とは違い、打率は休んでも順位は下がらない。しかし、吉田の打席数は437、143試合制での規定打席は443だから6足りない。吉田がこのまま欠場すると首位打者は厳しくなる。
規定打席に「6」足りなくても吉田の首位打者があり得る?
しかし、公認野球規則にはこういう例外規定がある。
<9.22(a)>
ただし、必要な打席数に満たない打者でも、その不足数を打数として加算し、なお最高の打率、長打率、出塁率になった場合には、この打者がリーグの首位打者、最高長打率打者、最高出塁率打者となる。
このルールを適用すれば、吉田正尚はシーズン終了まで全休しても
382(376+6)打数127安打 打率.33246
となる。この時点で森友哉以下のライバル打者が、この打率に届かなければ、吉田の首位打者が決まる。
過去にこのルールを適用されて首位打者になった選手はNPBではいない。MLBでは1996年のトニー・グウィン(パドレス)、2012年にジャイアンツのメルキー・カブレラがこのルールを適用して首位打者になることができたが、カブレラはドーピング検査で出場停止になっていたため、本人が首位打者を辞退している。
こうしたルールで首位打者になるのは、吉田正尚にとって本意ではないだろう。とはいえ個人記録としては現時点で有利な立場にあることを認識して、焦らずに復帰を目指してほしい。