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「海外配送ストップでフレームが届かない!」絶体絶命のパラ金メダリストを“米フィギュア代表”が救った話
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byGetty Images
posted2021/09/01 17:00
パラリンピック4大会連続出場の車いすアスリート、タチアナ・マクファデン 。前回リオでは4つの金メダルを獲得し「鉄の女王」と呼ばれる
「ガレージにプールを設置して、好きな音楽をガンガンかけて練習して最高の気分だった」と笑う。
2m強の小さなプールで、腰にチューブをつけて体勢を固定して泳ぎ続けられるものだが、これで5カ月間も練習を続けたというから驚きだ。ちなみに、最初に組み立てた際はマッケンジーが取扱説明書をよく読まなかったため、全てやり直しになってしまったとのこと。また毎日、練習後にガレージの床掃除をしなければならなかったこと以外は「ユニークで楽しい経験だった」と笑っていた。
ガレージで泳いだ選手もいれば、湖でコロナを乗り越えた選手もいる。
銅メダリストは「友人がボートで伴走しながら……」
競泳で3大会連続出場を果たしたエバン・オースティン(クラス:S7、SM7)もプール閉鎖で練習場所を失った。
「自宅の浴室で練習しようかなと思ったんだけど、僕は背が高いので狭かったな……。あ、もちろん冗談だけどね(笑)」と前置きし、こう続けた。
「湖のそばに別荘を持つ友人がいて、『コロナの間、そこに住んで湖で練習したら』と提案してくれて。プールの壁がない湖で思う存分自然を堪能しながら泳いだ。友人は所有するボートで僕の横を伴走してくれて、他のボートや障害物にぶつかったりしないように気を配ってくれた」
その友人はリモート勤務だったため時間を調整して、仕事をしながらオースティンの練習のサポートをしたという。オースティンが怪我をしたり、事故に巻き込まれないようにという最大限の配慮だったのだろう。オースティンは3歳前後に遺伝性痙性対麻痺を発症。足が麻痺したり、痙攣したりするため、まっすぐ歩けず、頻繁に転倒することもある。
「広々とした湖でオープンウォーターの選手の気分で泳いだ。リオ五輪以降にクラス分けが変更されて、コロナの影響で試合数が少なく試合勘を戻すのが大変だったが、東京ではサポートしてくれた人たちに感謝し、頑張りたい」と話していた。
その宣言通り、男子400m自由形で銅メダルを獲得。その他でも上位を目指す。
海外配送がストップ 車椅子が壊れた陸上選手は…
陸上で400mからマラソンまで5種目に出場予定のタチアナ・マクファデンは、コロナ禍にレース用の車椅子(通称レーサー)が破損するというアクシデントに襲われた。