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「海外配送ストップでフレームが届かない!」絶体絶命のパラ金メダリストを“米フィギュア代表”が救った話
posted2021/09/01 17:00
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
Getty Images
パラリンピックが開幕した。選手たちの弾けるような笑顔、悔しそうな表情から、これまでの努力や苦労など様々なものがうかがえる。
コロナ禍に練習場所が閉鎖され、自宅周辺の道路で練習したり、もしくは室内のみでの練習になったり、またコーチや練習パートナーとの接触が禁じられ、オンラインで指導を受けた選手もいた。世界中のスポーツ選手が同じような経験をし、乗り越えた大会だからこそ、過去の大会よりも感情が溢れる場面が多いような気がする。
米国のパラリンピアンも同様の経験をしたが、ユニークなアイデアや多くのサポートで困難を乗り越えてきた。
「簡易プールを買ってもいい?」ガレージで猛練習
実家のガレージに簡易プールを設置したのは、競泳のマッケンジー・コーン(クラス:S7、S8)。彼女は4歳のときに骨形成不全症を患い、そのセラピーの一貫で水泳を始めた。リオ大会では6種目に出場し、金メダル3つ、銀メダル1つを獲得。東京が3大会目の出場で、すでに女子100m自由形で銀メダル、女子400m自由形で金メダルを獲得している。
普段は米国オリンピック&パラリンピック委員会のトレーニングセンターがあるコロラド州コロラドスプリングスを拠点にしているが、コロナ禍では施設は閉鎖され練習場所を失ったため、しばらくの間ジョージア州の実家に戻った。
「最初は陸上トレーニングや自重トレーニングでコンディショニングしていた」とマッケンジー。
東京大会の延期は決まったが、水から長い時間離れれば体がなまってしまう。どうしたものかとコンピュータにかじりつき、あるものを見つけた。
「ガレージに置けるサイズの簡易プールを見つけた。手が届く値段だから、絶対にほしいと思った」
だが、実家住まいのため、両親の許可なくプールを設置することはできない。タイミングを見計らって「簡易プールを買ってもいい?」とちょっと甘えた声でお願いしたところ、父親は最初、「本気で言ってるのか」と驚いたそうだ。
しかしマッケンジーが「オンラインで残り1つしかない。プール練習がしたい」と訴えたところ、「今すぐ買いなさい」と賛成してくれた。