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「もう若くはないんだ」パッキャオがついに引退? 島国の小柄なボクサーが母国の大統領候補に上り詰めるまで
posted2021/08/27 11:00
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Getty Images
「Thank you, Boxing」。6階級制覇を果たしたスーパースターの口からそんな言葉が出ると、やはり周囲の心を打つだけの重みがある。現地8月21日の試合後、マニー・パッキャオ(フィリピン)の言動からは固い決意が感じられた。
この日、ネバダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで行われたWBAスーパー世界ウェルター級タイトル戦で、休養王者のパッキャオはスーパー王者ヨルデニス・ウガス(キューバ)に0-3の判定負け。42歳となった老雄は復帰戦を飾れず、2017年7月以来、4年1カ月ぶりの8敗目(62勝39KO2分)を喫した。その後、リング上で行われた会見での言葉を聞く限り、“レジェンド”は現役を離れることを心に決めているように思えた。
「まだ戦いたいが、身体のことも考えなければいけない。人々を助けるために、やり遂げたいことはたくさんある。それこそが私のミッション。すべての人々、特にフィリピン国民のインスピレーションになりたいんだ」
パッキャオの衰えも明白だった
足掛け26年に及ぶキャリアに本当に幕を引くのであれば、良いタイミングなのだろう。戦前は有利と目されたウガス戦だったが、蓋を開けてみれば完敗だった。サイズ、キューバ人らしい技巧を備えたウガスは誰が戦っても簡単には勝てない難敵。「もともとの対戦者だったエロール・スペンス・ジュニア(アメリカ/左目の網膜裂孔で直前にパッキャオ戦をキャンセル)と予定通りに対峙していたら危険な試合になっていた」という声には素直に同意はできないが、それにしてもパッキャオの衰えも明白だった。
ラウンドごとに相手の倍以上にあたる約68発のパンチを放つも、ヒットしたのは16%(815発中130発)のみ(ウガスは405発中、37%にあたる151発をヒット)。何より、独特の様々なアングルからのパンチを可能にしてきた足がいうことをきかず、パンチには十分な力がこもらなかった。
「気持ちとハートの強さは100%だったが、足が痙攣を起こしてしまった。おかげで動けなかった。言い訳をするつもりはない。(若い頃は)リングをもっと容易に動き回り、アウトボクシングできたけど、(今回は)2回から12回まで足が十分に動かなかった。もう若くはないんだ」