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「もう若くはないんだ」パッキャオがついに引退? 島国の小柄なボクサーが母国の大統領候補に上り詰めるまで 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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posted2021/08/27 11:00

「もう若くはないんだ」パッキャオがついに引退? 島国の小柄なボクサーが母国の大統領候補に上り詰めるまで<Number Web> photograph by Getty Images

現地8月21日にWBAスーパー王者ヨルデニス・ウガスと対戦したパッキャオだったが…

 左ジャブ、右ストレートの的確さが目立ったウガスも手数自体は少なく、試合全体を明確に支配したわけではない。それでも判定が発表された瞬間、1万7438人の観衆から不満らしき声はほとんど出なかった。ベガスの大アリーナが静まり返ったシーンは、フィリピンの英雄の落日を確実に感じさせた。

歴史に刻まれる偉大なキャリア

 パッキャオが歴史に刻まれる偉大なキャリアを過ごしてきたことは誰にも否定できない。

 フライ級からスーパーウェルター級までを股にかけて戦い続け、1990年代、2000年代、2010年代、2020年代と4ディケイドにわたって世界タイトルを保持した。その過程でエリック・モラレス、マルコ・アントニオ・バレラ、ファン・マヌエル・マルケス(すべてメキシコ)、オスカー・デラホーヤ(アメリカ)、ミゲール・コット(プエルトリコ)といったトップスターを撃破。エキサイティングなファイトスタイルと、常に強敵との対戦を望む無鉄砲なまでの戦闘意欲でファンを驚かせ、また喜ばせてきた。

「ボクシングを通じて私は多くを成し遂げ、一方でボクシングは私に多くを与えてくれた。みなさんのおかげで夢が達成できた」

 パッキャオはボクシングファンに感謝の言葉を述べたが、実際にお礼を言いたいのはファンの方だったに違いない。2015年、フロイド・メイウェザー(アメリカ)との“世紀の一戦”にこそ敗れたが、それでも人気は翳らなかった。ボクシングの本場アメリカにおいて、そのアメリカを代表するスーパースターのメイウェザーに勝るとも劣らない知名度と評価を勝ち得たことこそが、パッキャオの偉大さを象徴していただろう。

 これほどのレジェンドとなると、現役生活をひと段落させた後に思い描くプランも並大抵のスケールではない。フィリピンでは政治家として上院議員も務める規格外の男は、なんと来年5月のフィリピン大統領選挙への出馬が噂されている(立候補の締め切りは10月いっぱい)。

フィリピン大統領選立候補は「ほとんど規定路線」

「私はレガシーを残し、人々のインスピレーションになりたい。人々のために尽くしたい。私のボクシングでのキャリアは終わったのかもしれないが、最も大事なのは世界中の兄弟姉妹たちを助けられるかということ。言葉と行動で互いへの愛を示していかなければいけないんだ」

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