甲子園の風BACK NUMBER
「ボールが常に濡れて投げづらい」水たまりの甲子園と“4年前、泥だらけの筒香嘉智” 好カードの強行開催→コールドは最善策だったのか
posted2021/08/18 06:00
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Kyodo News
昨夜から降ったり止んだりを繰り返す雨で、聖地のグラウンドは試合前から湿っていた。降水確率90%。目に見えない程度の雨が落ちる中、午前8時にプレーボールは告げられた。「史上最強」の呼び声も高い東海大菅生と、優勝候補・大阪桐蔭の一戦。1回戦屈指の好カードだ。
大阪桐蔭は初回、2死から3番・池田陵真の打球は三塁へ。柔らかいグラウンドの影響もあってグラブから打球をこぼした東海大菅生三塁手・小池祐吏の悪送球も重なって、池田は二塁まで進んだ。
続く4番の花田旭。東海大菅生・桜井海理のスライダーを捉える。バックスクリーンへ突き刺す先制2ラン。強力打線の4番に座る力を証明する一打でスタンドを沸かせた。大阪桐蔭は3回にも2番・藤原夏暉と、5番・前田健伸がソロ。いずれもライナー性の打球でスタンドまで運んだ。
投手は「軸足が滑って蹴れない状態」
3回を終えて4-1で大阪桐蔭がリード。予想された接戦とは、やや違った試合展開となった。対照的に予報通りとなったのは、雨の降り方だった。
試合開始時点は甲子園を薄い水色で染めていた雨雲レーダーが、濃い青色へと変わっていく。5回。東海大菅生の2番手・本田峻也がマウンド上でタイムを要求した。ベンチの選手からタオルを受け取って両手をゴシゴシと拭き、スパイクの泥も拭き取る。
「軸足が滑って蹴れない状態で、ボールも常に濡れていて投げづらかったです。気持ちを強く持って、腕を振ることだけを意識して投げていました」
2球、3球と投げると、スパイクの裏は泥がべっとり。本田はマウンドでジャンプしてスパイクの泥を落としながら、腕を振った。だが、ボールは高めに浮き、足が滑ってバランスを崩す場面もあった。バッターボックスも白線が消え、捕手や球審の足元には水が浮いていた。
阪神園芸の“職人”も応急処置を施すしかなく
5回を終えてグラウンド整備。“職人”で知られる阪神園芸のスタッフがマウンドとバッターボックス付近に、明るい茶色の土を入れて地を固める。しかし、その土はあっという間に雨でこげ茶色に変わった。