草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
《雨と甲子園》「野手もロジン」「2日で計8失点でも…」前回(12年前)の“雨天ノーゲーム”を逆転勝ちした高知バッテリーの記憶
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph bySankei Shinbun
posted2021/08/17 11:01
8月12日の帯広農業対明桜にて、雨天ノーゲームとなりグラウンドに一礼し引き上げる明桜ナイン。
12年前の高知vs.如水館は大会史に残る“3連戦”
高校野球は今日勝っていたから明日も勝つとは限らない。負けていた方に失う物はないが、勝っていた方はどうしても「損失」を考えてしまう。ノースアジア大明桜が5点リードを帳消しにされながらも勝ちきったのは、決して当たり前のことではない。
今回が12年ぶりの降雨ノーゲーム。前回の出場選手こそが高知高のエースだった公文であり、彼らは「2度あることは3度ある」ではなく「3度目の正直」を晴れ舞台で実行した。木下拓哉(中日)との大型バッテリーで明徳義塾とのライバル対決を制し、2009年(第91回)の甲子園に駒を進めた。1回戦の相手は如水館(広島)。大会史に残る「3連戦」は8月9日にスタートした。
まずは0対2と劣勢の3回裏でノーゲームに。受けた木下は「完全に相手の流れだった。たぶん、雨が降っていなければ普通に1回戦負けだったと思う」と振り返っている。順延された10日も第1試合。前日以上に予報は絶望的だったが、プレーボールがかかった。
「前の日のことをラッキーだとは思うな。気を引き締めるためにも、そういう雰囲気はあったんですが、とにかく空が真っ暗だったのは覚えています。野手もユニホームのズボンの後ろポケットにロジンを入れていましたから」
木下自身も幻とはなったが本塁打を放つなど、打線は活発だったが公文が打ち込まれて5対6。5回途中に再びノーゲームが宣告された。
「如水館には申し訳ないですけど…」
現在なら初戦から早くも球数制限がちらつくところだが、公文は11日も先発した。記録に残ることはないが、2日で7回を8失点という「記憶」は残る。ただ、公文は「晴れたら抑えます」と自信に満ちていた。その言葉通り、3失点完投。打線も1回に木下が先制打を放つなど、9点を奪って完勝した。それまでの「2試合」は第1試合だったため、選手たちは明け方に起き、早朝に球場入りする生活を続けていたが、大会本部は「連戦」の疲労に配慮。第4試合に変更したことで、肉体の負担は多少なりとも軽減されたようだ。