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西田有志が振り返る東京五輪ベスト8とブラジル戦の涙、愛着あるジェイテクトを離れイタリアへ「常識にとらわれたくない」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byItaru Chiba
posted2021/08/12 17:03
イタリア移籍を発表したバレーボール日本代表・西田有志。東京五輪の経験をパリにつなげるため、挑戦を選んだ
昨シーズンのジェイテクトの最終戦が行われた3月28日の試合後のこと。すでにイタリアへの移籍が決まっていた西田は、コート上でチームメイトに胴上げされ、感極まった。
「あれは柳沢(広平)さんが泣き出したので、なんかつられて泣いちゃって」と照れくさそうに苦笑した。
それでも、「ジェイテクトは僕のバレーボール人生の始まりの地。初めての景色をたくさん見せていただいたチームでもあるので、すごく恩がある。このメンバーでやれたこともすごい縁だし、自分にとってかけがえのない財産」とチームへの愛着を隠さなかった。
ちょっと生意気な高校3年生を温かく受け入れてくれて、一緒に成長を遂げ、2019-20シーズンには初のリーグ優勝を果たした。海外移籍を決断したものの、3月の最終戦の頃はまだ、チームを離れるのが寂しくて、後ろ髪を引かれているようだった。
しかし今は、まっすぐに前を向いている。五輪の舞台を経て、海外で自分のやるべきことがはっきり見えた。
「いい場面では誰でも決められるかもしれないけど、悪い場面でも決められるレベルをもっと上げていかないといけない。今回は怪我(右足首の捻挫)からの復帰直後で、サーブの感覚が戻らないままオリンピックが終わってしまったので、そこももっとレベルを上げて、イタリアでも活躍できるようにしたい」と決意を語った。
イタリア料理が楽しみ
初めての海外生活で不安なことを聞かれると、「僕は誰かとしゃべっていないとキツイので、寂しくならないかなというところだけ。でもコミュニケーションについては、いつも通り自分らしくとっていけば大丈夫かなと思います」
楽しみにしていることは、石川祐希(ミラノ)やカジースキ(トレンティーノ)との対戦と、食事だという。
「自分が行くところは魚料理が有名なので、すごく楽しみ。自炊は苦ではないので、イタリア料理のレパートリーが増えればいいなと。いいふうにイタリア人になりきれたらと思います」と笑う。
物怖じしない性格と持ち前の愛嬌で、南イタリアの新天地にもすぐに溶け込み、暴れてくれるに違いない。
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