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西田有志が振り返る東京五輪ベスト8とブラジル戦の涙、愛着あるジェイテクトを離れイタリアへ「常識にとらわれたくない」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byItaru Chiba
posted2021/08/12 17:03
イタリア移籍を発表したバレーボール日本代表・西田有志。東京五輪の経験をパリにつなげるため、挑戦を選んだ
2018年春に高校を卒業したばかりの西田が初めて代表合宿に参加した時、日本代表のフィリップ・ブランコーチは、「彼の中には虎がいる。内に秘めているものは素晴らしい」と絶賛したが、身長の面で「オポジットとしては、トップレベルでやるのは難しいかもしれない」とももらしていた。だが西田は海外勢相手にも非凡な決定力を証明し、日本代表に不可欠な存在になった。
今夏の東京五輪でも、準々決勝進出を決めた予選ラウンド最後のイラン戦でチームトップの30得点を挙げるなど、得点ランキング10位に入る活躍で日本の快進撃を支えた。
初めて経験した五輪はどんな場所だったのか。西田はこう振り返る。
「出てみないとわからないっていうのは、こういうことなんだな、これがオリンピックなんだな、というような感覚でした。なかなか口で伝えづらいんですけど、他の国の選手も含めて、試合に負けてその日で終わりですとなった時に、全選手が泣く大会って、オリンピックしかないと思うんです。それぐらい懸けている大会で、それぐらい緊迫感のある大会」
西田自身も、準々決勝のブラジル戦に敗れた後、涙があふれた。
「単純に、勝ちたかったけど、勝ちきれなかったという悔しさがありましたし、でもその中にも少しのやりきった感がありました。あの時は、なぜかわからないんですけど、普通にああいうふうに泣いてしまった。なんか自然と出てくるという感覚でした」
日本は今持てる力を出し切ったが、それでも世界ランキング1位のブラジルから1セットも奪えなかった。
「結果を見ると、いいバレーをしていても、上位チーム(ブラジル、ポーランド、イタリア)には勝てていないというのが現状。自分たちの経験値や能力、マインドといったところのレベルがまだまだそこに到達していない。より一層、この1年に懸ける思いは強くなりました」
“現状”を変えるため、西田は「大好きなチーム」であるジェイテクトを離れ、新たなスタートを切る。