伊藤美誠「水谷選手とだから勝てた」

　東京五輪では、伊藤美誠と混合ダブルスに出場し、中国ペアを破って金メダルを獲得した。中国打倒を果たした瞬間だった。

　ある意味、混合ダブルスの最大の山場は準々決勝のドイツペアとの一戦だった。ファイナルゲームまでもつれこみ、2－9と大量リードを許した試合だ。その後も何度もマッチポイントを握られながら食らいつき、逆転勝利をおさめた。

　伊藤は試合後にこう語っている。

「水谷選手とだから勝てたって思いました。あきらめない気持ちというか、声も1点1点、かけてくれました」

　伊藤を落ち着かせた水谷の存在あればこその金メダルであった。

　男子団体でも、丹羽や張本が目を向ける先に水谷がいた。そして水谷に抱き着いた張本の動作は、水谷の卓球界での位置を示しているようだった。

　オリンピックで4つ目のメダルを手にした水谷はエールをおくるように、こう語った。

「僕は最高の後輩たちに恵まれて、素晴らしい結果を残すことができたので、パリでは、ぜひ金メダルを目指して後輩たちに頑張ってほしいと思います」

　そんな水谷に、張本は「引退させません」と言った。

　そこにもまた、水谷の存在の大きさが込められていた。

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