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「福原さんは、すごいな」卓球・石川佳純が見ていた“リオのキャプテン”の姿 団体“銀”の3人は東京五輪にどう挑んだか
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Matsunaga/JMPA
posted2021/08/06 17:07
卓球女子団体決勝で中国に敗れ、銀メダルを獲得した日本代表。それぞれにこの大会に懸ける思いがあった
「福原さんは、すごいなと」
メダルの重みを尋ねられて答える中で、石川は言った。
「10年間、トップレベルで続けてこられたということは、自分をほめてもいいかな、と思います。頑張り続けたことがうれしいです」
石川は今大会、キャプテンも務めた。決勝でも、試合をしている伊藤にペットボトルを差し出し、あるいは伊藤や平野に拍手と声援をおくる姿があった。準決勝のダブルスでは、試合中、好プレーがあれば平野を笑顔で称える場面があった。チームを盛り立てようとする姿があった。
5年前のリオで銅メダルを獲得したあと、石川が感じたのはチームとしてのまとまりだった。これはリオで団体戦を終えたあとの言葉だ。
「日に日に団結力も高まっていった。2人(福原愛、伊藤)と一緒に団体戦を戦って、試合ですごく心強いですし、2人だったら勝ってくれるんじゃないかとずっと信じているので、私も自信を持って戦うことができました」
チームのキャプテンを務めた福原の期間中のふるまいもまた、心に残っていた。
「福原さんは今回キャプテンとしてみんなをまとめてくれたり、声をかけてくれたり、気にかけてくれたりして、チームとしてすごく団結力が高まったと思います。そういうふうに人を気にかけられるのは、すごいなと」
今度は自分だ、と責任をまっとうする石川の姿勢もまた、銀メダル獲得につながっている。
「3大会、こうして日本代表として戦って、日本のレベルが上がっているのを感じますし、その中で自分もプレーできたことがうれしかったです。10年間頑張ってきて、ほんとうに強い後輩、素晴らしい先輩と、団体やダブルスを組めたことは幸せです」
「東京が終わったらもうやりたくないって」
伊藤はこう語った。
「中国人選手に負けて終われない気持ちが強いです。勝って終わりたい。まずは自分を1回落ち着かせて、ゆっくりさせてあげたいというのはあります。これからも自分のやりたいことをやって、自分の道を進みたいと感じます」
今回が初めてのオリンピックだった平野は語る。
「最近の1、2年、3年くらい、正直、卓球があまり好きじゃなくて、東京が終わったらもうやりたくないって思っていました。今回こうして戦えて、すごく楽しくて、まだまだ卓球をやりたいと思えるようになってきました。続けてきてよかったと思います」
3人がそれぞれの道で歩み、そして結束して臨んだ東京五輪の試合は終わった。
3人はそれぞれの感慨を抱き、それぞれのスタートを切っていくだろう。
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