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<42歳の引退表明>最高峰クラス通算115勝 WGPの常識を変えた天才、バレンティーノ・ロッシが下した「正しい決断」とは
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2021/08/06 17:01
1979年2月16日生まれの42歳。会見では涙はなく、世界に愛された陽気なキャラクターらしい笑顔を見せた
僕が思い出すのは、96年のチェコGPの125ccクラスで初優勝したときのことだ。イタリア人の盛り上がり方は異常だったし、ロッシはデビューしたときからイタリア人の期待を集めていた。250ccクラスのレースで勝利し、チャンピオンを獲得した1999年のイタリアGPでは、ロッシはアロハシャツと短パンに着替えてパレードラップを行い、ファンの度肝を抜いた。これをきっかけにロッシは、優勝したレースで次々にいろんなパフォーマンスを繰り広げ、世界中のファンを喜ばせてグランプリの人気を一気に高めた。
グランプリを変えた生ける伝説
コース上ではブレーキングで足を出す走法を編み出し、そのライディングスタイルはいまやレース界の常識となった。車載カメラを意識したパフォーマンスもロッシが最初に行ったものだし、セッション終了後やレース終了後の豪快なウィリーはファンのハートを掴み、カメラマンにも絶大な支持を得ることになった。
今年は前半9戦を終えてイタリアGPの10位を最高位に総合19位。「今年のリザルトは期待していたものではないし、レースを終える毎にいよいよかなと思っていた」と引退を決意するまでの経緯を語り、「我がレース人生に悔いなし」とも語った。
ラストランまであと4カ月。レースを続けてこられた理由を「情熱」と語ってきたロッシの最後の走りを見届けたい。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。