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「はっきり言って、初代タイガーマスクのクローン」 《タイガー・クイーン》衝撃デビューに佐山聡も「思った以上の合格点」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/08/09 11:00
7月29日、後楽園ホールでデビュー戦に見事勝利したタイガー・クイーン。
タイガーステップにローリングソバット…まさに“完コピ”
ハードルが上がるだけ上がった状態で迎えた、山下りなとの一戦。入場曲はアニメ『タイガーマスク』のエンディングである『みなしごのバラード』をイントロに、クイーンの『ドント・ストップ・ミー・ナウ』だ。歌詞の中には〈重力をはね返す虎のように〉という一節もある。
エプロンからコーナーに飛び乗ってポーズを決め、ゴングが鳴ると軽快な足さばき。いわゆる“タイガーステップ”だ。ヘッドロックからクルッと回ってテイクダウンする“タイガースピン”、サルトモルタル(ムーンサルト)に風車式のバックブリーカー。まさに初代タイガーの“完コピ”だった。もちろんローリングソバットも。
攻め込まれる場面もあったが、セコンドのジャガーが檄を飛ばす。フィニッシュはツームストーン・パイルドライバーからダイビング・ヘッドバット、そしてタイガー・スープレックス・ホールドと初代の得意技3連発。クイーンが技を繰り出すたびに観客が沸いた。40年前の記憶がくすぐられ、同時にその再現度の見事さにも驚嘆させられたのだ。クイーンの試合を見ながら、40年前の初代タイガーマスクのデビュー戦であるvs.ダイナマイト・キッドが脳裏に蘇る。そういう闘いだった。
もちろん、この試合が初代タイガーのデビュー戦と完全に同等のクオリティだったと言うつもりはない。今すぐ40年前と同じセンセーションを巻き起こせるかというと、そういうことでもないだろう(それを目指すなら、地上波ゴールデンタイム中継から始めなければいけなくなる)。
ただ控えめに言っても、タイガー・クイーンが“大型ルーキー”なのは間違いない。それどころか、動きにしても山下りな(現在2つのベルトを保持している)に勝ったことからしても、単なる新人とは思えないほどだ。いや、クイーンが何かしらの“経験者”だったとして、そうなると“タイガーっぷり”の素晴らしさがさらに際立つことになる。もともとの動きのクセなどが一切出なかったということなのだ。