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「はっきり言って、初代タイガーマスクのクローン」 《タイガー・クイーン》衝撃デビューに佐山聡も「思った以上の合格点」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/08/09 11:00
7月29日、後楽園ホールでデビュー戦に見事勝利したタイガー・クイーン。
初代タイガーマスクは「思った以上の合格点」
ジャガーは「一発一発しっかりできていた。もの凄いプレッシャー、緊張の中であそこまでの動きができたのは最高」とクイーンのデビュー戦を評価した。佐山も、団体の平井丈雅代表を通じて「思った以上の合格点」とのコメントを発表している。
佐山はクイーンの試合を、客席後方で見ていたそうだ。平井代表曰く「僕がストロングスタイルプロレスを始めて16年、見たことがない光景でした。それだけ佐山先生の力の入れようが凄いんだなと」。
クイーン自身のコメントはというと、ここでもなかった。試合を終えるとバックヤードのエレベーターに乗り込み、そのまま会場を後に。やはり“正体不明”を貫いた。実は試合中もまったく声を出していないし言葉を発してもいない。
ということは、プロレスに不可欠の感情表現が著しく制限されるということだ。一方、そのことで“タイガーらしさ”が増したとも言える。そうしたところまで含めて、佐山やジャガーはクイーンの能力に惚れ込んだのかもしれない。
今どき“正体不明の覆面レスラー”は成立しにくい。どこかに覆面レスラーが現れると、何となく“中”の予想がつくものだ。たとえば「○○が最近、海外武者修行を終えたみたいだから......」といった具合。本名や素顔を公開しなくとも、サイン会などでファンと気軽に交流することは普通だ。しかしタイガー・クイーンは徹底して“正体不明”。そうしたところもまたプロレスの古き良きロマンを感じさせる。
初代タイガーマスク・佐山聡が直々に指導した女性版タイガーマスク。しかも正体不明。このインパクトは大きい。現在のプロレス界、そのファン層の外に届く可能性を持っている。ピンとこない若い方は、試しに職場のアラフィフの上司に「初代タイガーマスクの佐山聡が女子レスラーを育ててるらしいですよ。タイガー・クイーンっていうんですけど」と聞いてみてほしい。「えっ、何それ!」となるはずだし、いかに初代タイガーが凄かったかを熱っぽく語りだすかもしれない。