卓球PRESSBACK NUMBER
史上初の銅も「99は悔しい」…失意の伊藤美誠を復活させた“コーチの冗談”「そんなこと思えねーよ!(爆笑)」
posted2021/07/31 11:06
text by
高樹ミナMina Takagi
photograph by
JMPA
卓球女子のエース、伊藤美誠が東京五輪のシングルスで銅メダルを獲得した。1988年ソウル大会で卓球が五輪競技に採用されてから、日本の女子選手がシングルスでメダルを取ったのはこれが初めてだ。
だが、この快挙に笑顔はなかった。わずか3日前、水谷隼とペアを組んだ混合ダブルスで金メダルを手にしたときの、あの弾けるような笑顔が嘘のようだ。
「悔しい気持ちの方が強くて、嬉しいという気持ちは薄い。1あるかなぐらい。99は悔しいです」
試合直後、記者団に問われた伊藤は悔しさの度合いをパーセンテージで表した。
目指していた金メダルに届かなかったこともあるが、伊藤は準決勝の負け方をことさらに悔しがった。
同い年のライバルに「まさかのストレート負け」
相手はライバルの孫穎莎(中国)。体は小柄だが体幹が強く、どんな体勢からもスピードと球威のあるパワードライブを打つ剛腕。選手層の厚い中国でも一番の成長株で、2016年リオ五輪シングルス金メダルの丁寧と入れ替わる形で東京五輪の代表入りを果たした。
伊藤とは同い年の20歳だ。二人は互いを「長年にわたって対戦し続けるライバル」と認め合い、対戦機会も多い。大きな大会では2019年世界選手権ブダペスト大会や同年の女子チームワールドカップ東京大会などで火花を散らしている。
これまでの対戦成績は6勝2敗で孫が大きくリードするが、世界選手権ブダペスト大会の3回戦で伊藤が大敗を喫して以降、その悔しさをバネに成長した伊藤と孫の試合は接戦になることが多い。
その二人が東京五輪の大舞台で戦うことになった。