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“アテネ金”冨田洋之が語る橋本大輝19歳「中学時代は全国レベルではなかった」「私もこの半年間の成長に驚かされた」《体操個人総合・金》
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byJIJI PRESS
posted2021/07/29 17:30
体操男子個人総合、橋本大輝(順大)が最終6種目目の鉄棒で3位から逆転し、金メダルに
トップの肖若騰(中国)との差は、0.467。
予選の鉄棒のスコアを比較する限り、橋本は逆転できる。
そして肖若騰のスコアは14.066。最終演技者の橋本は14.533を出せば金メダルだ。
最終演技者は、予選トップの選手に与えられた試練であり、名誉だ。競技場内だけでなく、全世界の注目を集めて演技をする。
橋本の演技が始まる。
アドラー。
カッシーナ。
コールマン。
伸身トカチェフ。
むずかしい技を、簡単にやってみせる。離れ技に向かう前、鉄棒下の橋本の姿勢は完璧だった。それこそ、冨田氏から伝わる日本の体操の神髄を、わずか19歳の橋本大輝が体現していた。
最後の着地は、一歩だけ足が前に出た。それでも、ライバルも含めて、誰もが橋本が王座に就いたことを理解した瞬間だった。
それにしても、これほどオリンピックの延期をプラスに変えられた選手はいないのではないか。橋本はコロナ禍で練習環境が制限されるなか、自らに向き合い、世界の頂点を目指して、軽やかに実現してしまった。
これでオリンピックにおける日本人の個人総合王者は6人目となる。
1964、遠藤幸雄。
1968、1972、加藤沢男。
1984、具志堅幸司。
2012、2016、内村航平。
そして、2021、橋本大輝。
そこに「2024」が刻まれることに、私は疑問を抱かない。
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