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“ロンドンでの惨敗”から9年、柔道男子はなぜ復権できたのか…高藤直寿が優勝直後に井上康生監督に“謝罪”した理由とは
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2021/07/28 17:03
柔道男子81kg級で金メダルを手にした永瀬貴規を抱きしめる井上康生監督。ロンドン五輪から9年、日本柔道は復権を見せている
「ぎりぎりで落ちた選手の顔しか浮かびません」
その大枠は、リオの後も変わっていない。五輪代表をつかんだ選手だけでなく、切符を手にすることができなかった選手にも同様の視線を注いだ。昨年2月、代表選手を発表した会見で、「ぎりぎりで落ちた選手の顔しか浮かびません」と語り、続けて選手たちの名前をあげて涙した。
また、東京五輪を間近に控え、抱負をこう語っている。
「選手たちは死に物狂いで、人生を懸けて戦っています。でも勝負は100%ではありません。さまざまなものを犠牲にして、さまざまなものを背負っています。勝っても負けても、頑張った選手にあたたかいまなざしと声援をいただければ、うれしいです」
揺るぎない強化方針を貫き、選手を常に大切にしてきた。その結果としての、初日からの好成績である。
高藤が井上監督に詫びた理由
2014年の出来事も象徴的だ。高藤が世界選手権で遅刻を繰り返し、強化指定のカテゴリーで降格処分を受けたことがある。
「私の責任です」
井上監督は頭を丸め、詫びた。
あれから7年、高藤が優勝したあとの言葉は、高藤が抱いてきた井上監督への思いの強さを物語っていた。
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