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「もう一度、這い上がる」“飯伏の代打”でも、棚橋弘至がドームIWGP戦で見せた“驚異の復活劇” 対戦した鷹木も「さすがはエース」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2021/07/28 11:02
7月25日に東京ドームで開催されたIWGP世界ヘビー級戦に登場した棚橋。急遽代打での出場となったが、存在感を見せつけた
「昔すごかったからじゃ、今は通用しないんですよ」
「自力で、自分の力で、IWGPにたどり着くのが一番格好いいのはわかっている。でも、こういった欠場は、この仕事に限らず、今のこの世界、助け合って生きて行かないといけない。オレは飯伏の選択を尊重しますよ」
棚橋は前日に熱く語っていた。
「昔すごかったからじゃ、今は通用しないんですよ。毎日、練習して、毎日考えて、毎日プロレスを思って。プロレスに費やした時間、その熱量がきっと自分に返ってくると思う」
棚橋はその腰にIWGP世界のベルトを巻くことはできなかった。だが、突然の代打で登場した男が、この日の東京ドームの主人公であったことは間違いない。
鷹木も棚橋に驚いていた。
「これで1勝1敗だ。また、やろう。だからといって、体調不良で欠場した飯伏がダメって言うわけじゃないからな。あいつはあいつなりにドクターと相談して、苦渋の決断をした。試合はできなくても、あいつのことだから、今日も会場に来ようとしたんだろうな。オレはその気持ちだけで十分だよ。飯伏が来るまで、負けられねえな」
IWGP世界のベルトを手に鷹木は続けた。
「1都3県、緊急事態宣言中だ。いいんだぜ、みんな。家でオリンピック見てたって。だけど、みんなは今日、プロレスを選んでくれた。心から感謝する。オレもよ、39になるおっさんだけれど、オレたちの世代が、まだまだプロレスを引っ張って行かなきゃいけないだろう」
「オレがやるべきことは、もう一度這い上がること」
棚橋との戦いを終えた鷹木の次の相手はEVILに決まった。その先には飯伏がいて、オカダ・カズチカやウィル・オスプレイもいるだろう。アメリカからの刺客もそろそろ上陸してくるはずだ。そして、棚橋もいる。
代打・棚橋は、満塁ホームランは放てなかった。でも、大きな感触をしっかりとつかんでいた。
「オレはもう二度と口が裂けても弱音は吐きません。今ある棚橋で、今の体で一度、もう一度トップへ。それが応援してくれているファンの方にできる精一杯のことだし、オレはみんなの期待に応えたいです。チャンピオン、強いね。NEVERで戦った時より進化していた。タフだし、何より自分の試合に自信が感じられた。これからオレがやるべきことは、もう一度這い上がること、決してあきらめないこと。年の半ばで、ドームで大一番ができて、気合入りました」
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