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女子レスラーからアイドルへ…黒崎セラ(17)と沙弥(37)がステージ上で続ける“闘い”とは「形は違っても生き様を見せたい」
posted2021/07/29 11:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
これもセカンドキャリアというのだろうか。
東京女子プロレスの選手として活動していたYUMIは2018年に14歳でデビューし、15歳で団体を卒業、今年アイドルになった。16歳での再出発。新グループ『闘狂生存者-Tokyo Survivor-』のメンバーで、新しい名前は「黒崎セラ」という。
プロレスを離れて生まれた、アイドルという“新しい夢”
プロレスラー・YUMIは中学生にして174cmの長身。キャッチフレーズは“次代の大物中学生”で、デビュー戦の相手がDDTの赤井沙希だったことからも期待の大きさが分かる。
もちろん黒星も多かったが、なにしろ14歳だ。ゆっくり、じっくり成長すればいいと誰もが思っていた。だが、そのキャリアは長く続かなかった。中3の冬に学業専念のため長期欠場に入る。ヒザのケガもあった。高校に入学して少し経ち、選んだのが“卒業”だった。
「試合したいんだけど、ケガでできないもどかしさがありました。この状態が続くなら、いったん踏み切って新しい道に進んだほうがいいんじゃないかって。自分でそう決めたら、プレッシャーから解放されてスッキリしましたね」
プロレスから離れるのと前後して、アイドルという新しい夢ができた。憧れたのはZOCのメンバーだった香椎かてぃ。引きこもり、喫煙写真でSNS炎上、DV被害の過去など赤裸々にさらけ出す「生き様」に惹かれたという。
「凄く刺激を受けました。自分もこうなりたいって。アイドルなのにアイドルらしくないところがよくて」
自分も“アイドルらしくないアイドル”になりたかった。ネットで探し、受けたオーディションは「ロック系アイドル」という言葉に惹かれて。「王道アイドル」といったフレーズのメンバー募集は最初から避けたそうだ。
新しい芸名、それにグループ名も自分で考えた。「東京サバイバー」に「闘狂生存者」という字をあてるのはメンバー全員で考えたこと。東京女子プロレスからの「東京つながり」は偶然だったらしい。
「アイドル界って、めちゃくちゃカラフルじゃないですか。でもちょっとモノクロな感じのグループもあっていいんじゃないかって」
「“キャピキャピ”してなくてもいいんだ、って伝えたい」
東京女子プロレスにはアイドル活動経験者や現役アイドルが多い。他団体もそうだが、芸能界からのプロレス挑戦は当たり前になってきた。プロレスを知らずにプロレスを始めた選手たちがよく言うのは「プロレスには怖いイメージがあったけど、見てみたらみんなキラキラしていた」ということ。やるほうにとっても見るほうにとっても、アイドル界とプロレス界は親和性が高いと言われている。
そんなキラキラした女子プロレス界からアイドル界に移ったセラは「キラキラよりギラギラしたい」と言う。“従来のイメージとは違うところに魅力を感じた”という意味では、プロレスラーになったアイドルと同じ感覚なのかもしれない。
「アイドルだからってキャピキャピしてなきゃいけないわけではないと思うんですよ。私がアイドルをやることで“私はキャピキャピしてないから”と思ってる人に、それでもいいんだって伝えたいですね。そういう人もアイドルになれるよって。だから、同じ歌って踊るのでもダンサーやアーティストじゃなくアイドルがよかったのかもしれない」