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「もう一度、這い上がる」“飯伏の代打”でも、棚橋弘至がドームIWGP戦で見せた“驚異の復活劇” 対戦した鷹木も「さすがはエース」 

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原悦生

原悦生Essei Hara

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posted2021/07/28 11:02

「もう一度、這い上がる」“飯伏の代打”でも、棚橋弘至がドームIWGP戦で見せた“驚異の復活劇” 対戦した鷹木も「さすがはエース」<Number Web> photograph by Essei Hara

7月25日に東京ドームで開催されたIWGP世界ヘビー級戦に登場した棚橋。急遽代打での出場となったが、存在感を見せつけた

棚橋はIWGPとは“別の世界”にいると思っていたが……

 棚橋のボロボロだった体が、コロナ・ブレイクの休息が幸いしたようによみがえって来た。シングルの連戦にも耐えられる感触があった。

 棚橋が鷹木とシングルで戦うのは、1月30日の愛知県体育館以来だ。あの時棚橋はNEVERのベルトに挑戦して、鷹木に「惚れた」とか「愛してます」とか言って、ベルトをもぎ取った。

 シングルのベルトから離れていた棚橋が、“感触”をつかんだ瞬間でもあった。それでも、普段は6人タッグマッチを戦っている棚橋は、あまり魅力を感じなかった。鷹木が棚橋の名前を口にしたことはあったが、IWGPはもう棚橋とは別の世界にあるようなものに思えていたのだ。

飯伏は「誤嚥性肺炎」で急遽欠場

 だが、波乱続きで始まったばかりのIWGP世界の歴史はまたしても、予期せぬ展開を呼んだ。7月10日の札幌大会から欠場していた挑戦者飯伏の欠場。「飯伏、どうしちゃったの」という声が聞こえてくる。

 新日本プロレスからは最初、飯伏は新型コロナウィルス予防のワクチン接種による体調不良と発表されていた。念のためのPCR検査は陰性であることも補足された。だが、しばらくして誤嚥性肺炎に訂正された。飯伏が何を誤って気管や肺に入れてしまったのかは定かではないが、新日本プロレスはドーム大会当日に飯伏の欠場を選択。代役の棚橋が挑戦者としてリングに立つことになった。

 三塁側ダッグアウト脇から登場した棚橋は、緊急事態宣言下で観客のまばらなスタンドを見上げた。

 5389人。特設のリング照明はなく野球に近い通常のドームのライトが棚橋の目に飛びこんできた。

 開催中の東京オリンピックだってほとんど無観客なのだ。棚橋は新日本プロレスの東京ドーム大会で“一番少ない観客”という特異な環境を経験できたことになる。

“飯伏の”ヒザ攻撃・カミゴェまで繰り出した

 棚橋はドロップキックや場外へのハイフライフローを繰り出し、飛べることを見せつけた。ジャーマン・スープレックスやフルネルソン・スープレックスも放った。鷹木の雪崩式の投げ技ラスト・オブ・ザ・ドラゴン(STAY DREAM)がトップロープからさく裂したときには、「終わりか」と思ったが、これも跳ね返した。

 圧巻だったのは鷹木の胸板にぶち入れた頭突きだった。フランスのジネディーヌ・ジダンがベルリンで、イタリアのマルコ・マテラッツィにやったようにドスンと一発かました。

 棚橋は“飯伏の”ヒザ攻撃カミゴェまで、鷹木に浴びせた。

 最後はリング中央でラスト・オブ・ザ・ドラゴンに沈んだが、棚橋が喝采を浴びるのには十分な熱戦だった。

「棚橋やるな」「棚橋すごいじゃん」「びっくりした」そんな声があちこちから聞こえて来た。

【次ページ】 「昔すごかったからじゃ、今は通用しないんですよ」

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