ライディングカットの撮影に行くと、決まって最初にトライするのは姉の詞音。もちろんトリックに成功するときもあれば、失敗して豪快に転ぶこともある。妹の碧莉はいつもその様子を見てからトライするので、そこから自身がトリックを成功させる術を学んでいるのだろう。

　ただしスケートボードの撮影では、いくら世界のトップに立つライダーとは言え一筋縄ではいかないハードなものもある。以前彼女と共に足を運んだレールのスポットに対応できず、悔し涙を流したことがあった。そんな時にトライしようとする彼女を必死に支えたのもまた姉の詞音だったのだ。

　ストリートのシーンにコーチや指導者は存在しない分、スキルアップには自分と向き合う孤独な時間がつきまとう。しかし碧莉にとっては、姉の詞音がそんな隙間を埋めてくれる、コーチ以上の役割を果たしてくれているのではないだろうか。

姉の詞音（右下）、フィルマーの村井祐里（左）と撮影での一コマ。どんな時も支え合う理想のアスリート姉妹だ（2017年撮影）　©Yoshio Yoshida

　またこのことは撮影だけに限らず、練習への取り組み方にも現れている。常にフラットな状態で練習する詞音に対して、碧莉は目つきが変わってスイッチが入ると急に暴走するように滑り、死んだように休むんだと哲雄さんは話す。

　そうやって常日頃から2人はお互いにない部分を補完し合っているのだろう。ガールズがほとんどいなかった時代からそうやって2人は常に切磋琢磨し続けシーンを底上げして、次世代に歩むべき道を示してきたのだ。

五輪で披露していない「高難度トリック」もまだまだある

　まだ20歳になったばかり。万全な状態で再びメダリストたちと相まみえる姿を期待したい。たとえ五輪ではなくても、彼女であれば間違いなく優勝を狙えるはずだ。

　実はスケートボードの世界においては、コンテストの結果以上にフルパートと呼ばれるライディングカットを収めた映像作品の方が重要視される向きがある。彼女にはまだ世間には見せていないトリックや映像がたくさんあるという。高難度なものであることは間違いない。

　五輪が終わったこれからは、彼女からリリースされるであろう映像作品の方も楽しみに待ちたいと思う。

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