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五輪前日に重傷「滑れていることが信じられない」…実父が明かす“スケボー金メダル候補”西村碧莉に何があった? 

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吉田佳央

吉田佳央Yoshio Yoshida

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photograph byGetty Images

posted2021/08/03 17:00

五輪前日に重傷「滑れていることが信じられない」…実父が明かす“スケボー金メダル候補”西村碧莉に何があった?<Number Web> photograph by Getty Images

女子ストリートにおいて「金メダル有力」と言われていた日本女子のエース・西村碧莉

 その後の練習もこの時のケガが尾を引き、何度も同じ場所をぶつけてしまったことで痛みが蓄積。そして悪夢は起こった。大会前日の練習中、レールセクションに失敗した時に激しく転倒。股関節付近、膝に加え、軽くではあるが顔面もケガをしてしまったのだ。

 すぐにドクターの診察を受けた。不幸中の幸いで骨に異常はなかったものの、かなりのダメージで歩くのがやっとで、車椅子に乗る程の重傷だった。普通の人間であればこの時点で辞退してもおかしくない。この時父の哲雄さんは、これ以上見ているのも辛いし、無理してもっと大ケガをしたら……、と止めるのは親の自分しか居ないとすら思っていたそう。

 だが舞台は五輪。しかもスケートボードの採用は史上初だ。

 彼女の回答はもちろん「やってみないとわからない。やれるだけの事はしたい!」だった。

帯同のトレーナーは「滑れていることが信じられない」

 そして人知れず満身創痍で迎えた本番。

 結果はすでに多くの皆さんがご存知なので省略するが、彼女の状態を知ってから見ると、予選のベストトリックラスト2本で見せてくれたトリックは、女子ストリートの隠れた名シーンだったのではないだろうか。

 しかも最後に見事成功させたハーフキャブ・ノーズスライド(進行方向とは逆側に進み、お腹側にあるセクションにデッキの先端を掛けて滑らせるトリック)は、前日に大ケガを負ったトリックというオマケ付きである。常識的に考えて、トラウマを抱えた状態で最後に持ってくるものではない。

 決勝ではベストトリックを5本中4本外してしまい、残念ながら8位に終わってしまったが、ドクターには「本人がやりたいのなら止めはしないけど……」と言われ、帯同していたトレーナーには「滑れていることが信じられない」とまで言われていたのだから、やはり彼女は鋼のメンタルだと言わざるをえないし、はっきり言って予選を通過したことすら奇跡だったのではないだろうか。

 ただハンディキャップを背負っても懸命に競技を続ける彼女の姿勢を見て、後輩である西矢椛や中山楓奈もハートに火をつけ、メダリストへの道を駆け上がっていったのは間違いない。西矢は自身のInstagramにて「私達を引っ張って行ってくれてありがとう!」という感謝の投稿を残している。中山楓奈も自身が世界大会に出場するようになったことで、改めて彼女への尊敬の念を抱くようになったことを口にしている。

【次ページ】 20歳にして「女子スケボー界の第一人者」

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