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堂安律「麻也くんの『代表で何点?』に答えたら『すくねーな』と」 五輪直前、“好調からの異変”もメキシコ戦で「期待以上の結果を」
posted2021/07/25 11:03
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
ドラゴンクエストやファイナルファンタジーといった日本を代表するゲーム音楽が鳴り響き、女子テニスの大坂なおみが聖火ランナーの最後を飾った東京五輪の開会式を、サッカー日本代表の選手たちはホテルで見ていた。
「フィナーレのところは僕たちも盛り上がっていました。個人的には野球が好きなので、王(貞治)さんや長嶋(茂雄)さんが登場されたときは感動しました」
そう振り返ったのは、日本代表の10番を背負う堂安律である。
サッカーは毎大会、他競技に先駆けて開会式前に開幕するため、式典に参加することはない。また、試合会場もひとつではなく移動しているため、選手村に入ることもない。
「おそらく他の競技の方よりも、僕たちは早くスイッチを入れている。みんなとも『僕たちはすでに大会中だよな』という話もしていて。だから、開会式を見てスイッチが入ったりすることはなかったですね」
その開会式の前日に行われた南アフリカとの初戦で、日本は自陣に引いて守った相手の守備をこじ開けられずに苦戦した。
なかでも堂安は、強引に仕掛けては跳ね返されるシーンが目についた。
「南アフリカが完全に引いて来たので、一発で仕留めるスペースを見つけられなかった。自分の特長の思い切りの良さを出せず、シュートを打つスペースに入っていけなかった。僕たちがボールを保持する展開は予想できたので、最後のところのクオリティをもっと上げていかないと。この先の試合でもそういう展開があるかもしれないので」
充実していたはずの堂安、本番直前の“異変”
もともと今大会を迎えるにあたり、堂安はかなりいい状態で調整を行うことができていた。
PSV(オランダ)から20年9月に期限付き移籍を果たし、自分のプレーを取り戻したビーレフェルト(ドイツ)での充実を代表チームにも持ち込み、6月のガーナ戦、ジャマイカ戦、7月のホンジュラス戦、スペイン戦で4試合連続となる5ゴールをマーク。2ゴールを決めたホンジュラス戦前日にはこんなふうに語っていた。
「自然体でいられているので、いいメンタリティで過ごせている。コンディションに関しても、少し実戦から遠ざかっていたけど、少しずつ整ってきています」
充実していたはずの堂安に異変が見られたのは、スペイン戦翌日のオフを挟み、本番直前の合宿に突入した7月19日のトレーニングでのことである。