- #1
- #2
Jをめぐる冒険BACK NUMBER
堂安律が賭けた『どこだよ、そのクラブ』への“あえて遠回り”「行ってよかったねと言わせたのは自分なので」《東京五輪》
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byRyo Kubota
posted2021/07/17 06:00
東京五輪を控え、ここにきて調子を上げてきた堂安律。12日のホンジュラス戦でも2ゴールをマークした
2020年9月にオランダの名門PSVからドイツのアルミニア・ビーレフェルトに期限付き移籍を果たした堂安は、主に右サイドハーフとして、ときにインサイドハーフやトップ下、トップまで務めながら、リーグ戦全34試合に出場し、5得点3アシストをマークした。
1部に昇格したばかりのチームは残留争いを強いられたものの、今年4月にはドイツの『ビルト』紙において「チームに欠かせない主力」と高く評価されてもいる。
「やっぱり1年間フルでしっかり戦えたのは、すごく自信になっていて。シーズンを通して試合に出てこそ選手は評価されるなって、改めて気づきました。いいメンタリティで代表に合流できたのが、すごく大きかったと思いますね」
こうした心理状態は、1年前には想像できなかったものだ。オランダの中堅クラブであるフローニンゲンからステップアップの移籍を果たしたPSVで、堂安は苦しんだ。
チームメイトはオランダ代表をはじめ、実力者ばかり。その中で堂安は「周りに預けて、仕掛ける姿勢が薄まってしまった」と自ら認めるように、プレーの積極性を失ってしまう。
なぜ、自分のプレーを出せなくなったのか、堂安自身もはっきりとした理由を見出せたわけではない。
「なんでなのか、本当に分からないです。対戦相手はフローニンゲン時代と変わらないわけで……。水が合わなかったとしか言いようがない」
「行ってよかったね」と言わせたのは自分
確かなのは、何かを変える必要があることだった。悩んだ堂安が導き出した答えが、ドイツ挑戦だったのだ。
ただし、ビーレフェルトはブンデスリーガの1部昇格を果たしたばかりのチーム。オランダの名門PSVからすると、ステップダウンの印象は否めない。
当時、堂安は「PSVで活躍することがビッグクラブへの近道に見えるかもしれないけれど、特別な選手になるための回り道」と話していたが、覚悟のいる決断であり、賭けだったに違いない。
その賭けに、堂安は勝った。
「結果論で言えば、自分自身うまくなったと感じるので、移籍して良かったと思っています。ただ、移籍を決めたとき、『どこだよ、そのクラブ』と思った人がたくさんいたのも事実。それを結果として『行ってよかったね』と言わせたのは自分なので、それは誇っていいと思います。移籍を決めるときは、『次、ダメだったら終わりだな』と思っていたので、その覚悟が実を結んで良かったです」