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三浦龍司ら3人が五輪へ マイナー種目「男子3000m障害」がナゾに急成長した“3つの理由”〈5年で15秒も短縮〉
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byAsami Enomoto
posted2021/07/16 17:00
現役大学生の三浦龍司が日本新記録で優勝した日本選手権・男子3000m障害。マイナーとも言われるこの種目は、近年急成長を遂げているという
では、もう少しタイムの上昇率を詳しく確認してみよう。リオ五輪イヤーであった2016年と、最新2021年の日本人トップ5は表の通りだ(Number Web以外でご覧になっている方は記事末尾の「関連記事」から ◆「男子3000m障害」“リオ五輪イヤー”2016年のタイムと比べてみる をご確認ください)。
トップだけ見ても、この5年で15秒近く記録を更新していることになる。
急成長した理由・その1)高速スパイクの登場
近年のレベルアップについては、山口が口にしていたようにシューズの進化が大きい。今季のトップ5全員がナイキの“高速スパイク”を着用。三浦は「エア ズーム ヴィクトリー」で、他の選手も同モデルか「ズームエックス ドラゴンフライ」を履いている。
昨年4月に発売されたナイキの高速スパイクは、近年のマラソン界を席巻している厚底シューズ(ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%やエア ズーム アルファフライ ネクスト%など)の流れを汲んでいる。ソールには約80%のエネルギーリターンを誇るズームエックス フォームと反発力を高めるプレートを搭載。ヴィクトリーは前足部にエアも装着されているのだ。
もちろん選手の走力UPも考慮しないといけないが、2019年から2020年にかけてのタイム短縮はスパイクの威力が大きい。三浦はアシックスのスパイクからヴィクトリーに履き替えて、自己ベスト(8分39秒37→8分19秒37)を20秒も短縮。山口はアシックス、青木はミズノからナイキの高速スパイクにチェンジして、ともに約7秒もUPした。従来のスパイクと比べて、1000mで2~3秒短縮しているような気がしている(※これは他の長距離種目にも当てはまる)。
理由・その2)有力選手たちの参入
「有力選手が積極的に取り組むようになってきた」(山口)ことに関しても、そんな実感がある。たとえば1994年の国体で現在の高校歴代ランキングで6位(8分47秒81)と8位(8分48秒44)の好タイムを残した高橋尚孝と小島忠幸は高校卒業後、3000m障害に注力することはなかった。駅伝人気が高いこともあり、走力のある選手は5000mや10000mに流れていく傾向があったのだ。
しかし、近年は高校時代にトップだった選手が高校卒業後も3000m障害の道を極めようとしている。