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三浦龍司ら3人が五輪へ マイナー種目「男子3000m障害」がナゾに急成長した“3つの理由”〈5年で15秒も短縮〉
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byAsami Enomoto
posted2021/07/16 17:00
現役大学生の三浦龍司が日本新記録で優勝した日本選手権・男子3000m障害。マイナーとも言われるこの種目は、近年急成長を遂げているという
その代表選手が塩尻和也だろう。高校時代に3000m障害で当時・高校歴代2位の8分45秒66をマークすると、大学2年時には3000m障害でリオ五輪に出場。箱根駅伝は4年連続で花の2区を担い、日本人最高記録(当時)の1時間6分45秒を打ち立てた。5000mや10000mで上位を狙える走力がありながら、日本選手権では3000m障害の勝負にこだわってきた。
理由・その3)入賞を狙える“秘策”が見えてきた
また日本歴代7位の8分23秒93を持つ阪口竜平は大学から3000m障害に本格参入している。こういう選手はほとんどいなかったが、阪口の場合は米国・オレゴン大のコーチに勧められたことが理由にあるという。3000m障害の参戦について、阪口は大学4年時に以下のように話している。
「ハードリングを極めれば世界で戦えるんじゃないかと思ったんです。8分10秒ぐらいで走れれば、世界大会の決勝に残れますし、入賞を狙えるチャンスは十分にある。3000mは7分51秒で走れるので、5000m12分台よりも可能性がある」
男子3000m障害は高さ91.4㎝の障害(5個のうち1個は水濠)を合計35回越える。障害の高さは男子400mハードルと同じだが、ハードルと違って倒れることがない。そのため多くの選手が障害に足をかけて越えていくことになる。
足をつけない「ハードリング」で障害をスムーズにクリアしていくことで、タイムを大幅短縮できる可能性があるのだ。男子3000m障害は1988年以降の世界大会でケニア人選手(他国への帰化選手を含む)が金メダルを独占してきた。彼らは水濠ですら足をかけずに跳び越えるダイナミックな跳躍力と日本人にはないスピード・持久力が武器だ。裏を返せば、障害を跳び越える緻密さには欠けていた。
その“盲点”を突くべく、阪口は積極的にハードリングを取り入れた。青木涼真も400mハードルの名選手だった法大・苅部俊二監督からハードリングを教わり、それをレースで実践するようになった。400mでは世界大会のファイナル進出が厳しい日本人選手が400mハードルでは世界大会で何度も入賞を果たしたように、スピードではなく、障害を越えるスキルに活路を見いだしたのだ。
スーパールーキー・三浦龍司がついに参戦
塩尻、阪口らの活躍で盛り上がってきたところにふたりの“後輩”に当たる三浦龍司が登場する(塩尻は順大、阪口は洛南高)。三浦はスピードがあるだけでなく、障害を跳び越えるのが非常にうまい。小中学時代、地元のクラブチームではハードル練習を積極的に取り入れており、当時のコーチからは、「5000mや10000mよりも戦える」と3000m障害への挑戦を勧められていたのだ。