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歩くことさえできなかった少年がVリーガーになるまで「人生はきっかけ次第で好転する」…春高で輝く柳田将洋のプレーに憧れて
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2021/07/12 11:02
VC長野トライデンツに所属する戸嵜嵩大(26歳)。中学生時代に患った病を乗り越え、日々コートでのプレーを楽しんでいる
戸田監督にとっても戸嵜は忘れられない選手の1人だという。
「中学の顧問の方から、体にハンデはあるけれど能力とハートはある選手だと伺っていました。入試の時は確かまだ松葉杖で入学直後にも手術があったのですが、1年生の9月くらいからはパフォーマンスを発揮していました。最後は主将も務めましたし、自分の決めた道を正解にするという意志や強い信念は群を抜いていました」
選抜チームに招集された際は、さらにその成長速度を上げ、チームに戻ってきた時は前向きな姿勢と情熱、吸収力の高さがより磨かれていた。
元気な姿を見せることが恩返し
身長と実力もグングンと伸びていき、駒澤大進学後にもインカレ8強入りに貢献するなど活躍。卒業後は強豪・東レで内定選手時代も含めて3季プレーし、昨季からはVC長野トライデンツでプロ選手として活躍している。
「いつも来てくださる方から初めて来た方まで、いろんな方に“今日来て良かった。楽しかった!”と感動させたいです」
そう語る姿は、プロアスリートそのものだ。
高校時代以降、歩けなくなるまでの悪化はしていないが、股関節の可動域が狭いため「もっと柔らかければ、もっとレシーブも拾い易いのかなと思ったりします」と少なからず影響はある。また、医師からは「普通の人よりも早く杖をつかなくてはいけなくなるかもしれない」とも言われている。
それでも戸嵜は前向きな姿勢を貫く。彼の躍動と歩みには、「人生はきっかけ次第で好転する」というメッセージが詰まっている。
「ポジティブな投稿を増やしたらSNSのファンの方の反応も大きくなりました。ポジティブな人のもとに人は集まるんだなと思いました」
家族への恩返しの気持ちが強く「元気に動いている姿を見せることが恩返しだと思います」と1年でも長く活躍したい。
「僕よりも困難な状況の方はたくさんいると思うので簡単には言えませんが、やっぱり諦めないことが大事だと思います。諦めなければ僕みたいになれる可能性もありますし、そうなりたいから頑張ってみようと思ってもらえるような存在になりたいです」
ファンのため、家族のため、困難に立ち向かう人のため。日々、高みを目指し戸嵜は跳び続ける。
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