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ガムを噛んだら歯ぐきから出血…レスリングの過酷な“減量”の実態「1日で10kg体重を増やす選手もいました」《東京五輪を楽しむツボ》
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byGetty Images
posted2021/07/12 17:35
リオ五輪グレコローマン59kg級で銀メダルを獲得した太田忍さん。レスリングの過酷な減量の実態を語ってくれた
これまでのオリンピックでは、59kg級の試合では、実際には60kg台後半の選手同士が戦っていたというのだからちょっとした驚きがある。
だが、今回の東京五輪から試合形式が変わる。
「リオ五輪後、当日計量で、決勝戦を別日にする2デイズトーナメントへとルール変更されたのです。これにより選手は決勝戦当日の計量も考慮して、どこまで体重を戻すか計算しないといけなくなりました」
体重を戻さないと予選・準決勝を勝ち抜けない、でも戻し過ぎると決勝当日の計量をパスできない――。そんなジレンマに陥る可能性があるのだ。
レスリングでは「選手の戦いはマット外にもあるのです」。
【2】体操「体操選手の理想の体とは?」
橋本大輝選手ら新世代の躍動が期待される体操については、アテネ五輪・団体金メダルの鹿島丈博さんが見どころを教えてくれた。
<滑り止めに塗られる意外なもの>、<内村航平選手はここがすごい>などの論点も「なるほど!」と膝を打ったのだが、意外性があったのが<体操選手の理想の体とは?>という項目だ。
「(体操は)技の数が増えたなどの理由で、以前より体への負荷が大きくなっています」
関節などへの負荷を考え、体重を増やしたくないという選手も多いという。そのためトレーニングも自ずと決まってくる。
「選手はウェイトトレーニングはほとんどしません。とても発達した筋肉に見えますが、すべて体操競技の練習で鍛えられたものなんです。また固そうな筋肉質に見えますが、触るととてもしなやかで柔らかい。強くてしなやかな筋肉が、体操選手の理想形でしょう」
かなりムキムキに見えるのに、実はソフト。究極に体操という競技に特化した美しき肉体。そんな機会はなさそうだけれど、思わず触ってみたくなるトリビアだ。