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「MRIを撮ってからでないと…」世界5階級制覇&日本“最年長”45歳女子プロボクサー・藤岡奈穂子がアメリカのリングに立つ日
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byAFLO
posted2021/07/08 11:00
現地時間7月9日、ボクシングの本場アメリカでWBA世界女子フライ級王座の防衛戦のリングに立つ藤岡
アウェイの洗礼はいやというほど受けている
プロになってからはメキシコで2度、ドイツで1度ファイトした。アウェイの洗礼はいやというほど受けている。
「メキシコだったら、現地に到着してもスムーズにホテルにチェックインできない。対戦相手の体重に合わせているのか体重計はいじられているので、私が乗ったら1㎏アンダーで表示されました。あからさまですよね」
今回のプロモーターであるデラホーヤはメキシコ系アメリカ人。ゴールデンボーイも彼の周辺はメキシコ系でガッチリと固められ、同胞と傘下の選手の売り出しに余念がない。藤岡は自分に何が求められているのか、把握している。
「メキシコは女子ボクシングが盛ん。ゴールデンボーイでも女子に力を入れていきたいし、世界王座のベルトもほしい」
先日、藤岡はゴールデンボーイの別の大会をライブ中継で観た。WBC世界女子フライ級タイトルマッチ。王者のイベス・サモラ(メキシコ)は1回早々ダウンを奪い、幸先いいスタートを切った。その後はこれといった山場もなく、試合終了のゴングが鳴らされた。
「ベルトを手にしたものが正義」
藤岡はサモラの勝利を確信したが、リングアナが勝利者としてコールしたのは、挑戦者でアメリカ人ながらゴールデンボーイが売り出し中のマーレン・エスパーザだった。観客席からはブーイングも起こっていた。藤岡は自身のブログで自分とサモラを重ね合わせたうえで現在の心境を吐露している。
「ベルトを手にした者が正義。これは自分にも起こりうる事。(私は)ドイツ、メキシコでも似たような経験をしてきた。アウェイで戦うとはそういうこと。改めて肝に銘じる。相手が起き上がってこれないくらいにダメージを与えなければいけない。一度ダウンを奪ったからといって油断できない、休めない。それを覚悟の上で平常心、いつも通りに戦うだけ。最後まで自分を信じてやる」
デラホーヤの思惑をどう引っくり返すか。噛ませ犬には絶対ならない。