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「MRIを撮ってからでないと…」世界5階級制覇&日本“最年長”45歳女子プロボクサー・藤岡奈穂子がアメリカのリングに立つ日
posted2021/07/08 11:00
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
AFLO
世界チャンピオンなのに、もう2年も試合をしていない。
「いつも試合間隔は1年空く。今回は+コロナで、もう1年という感じですね」
日本のプロボクサーとしては史上初めて5階級制覇を達成した。しかし、マスコミに大きく取り上げられることはなかった。
「評価も知名度も、なかなか上がらない。だったら世界で名前を広めたい。そうしたら否応なしに日本での知名度も上がる」
エイプリルフールに来た防衛戦のオファー
大志を胸に、藤岡奈穂子(竹原慎二&畑山隆則ボクサ・フィットネス・ジム)は7月9日(現地時間)、以前から希望していたボクシングの本場アメリカのリングに上がる。スレム・ウルビナ(メキシコ)を挑戦者に迎えての、WBA世界女子フライ級王座3度目の防衛戦が6月になって正式に決まったのだ。日本の女子世界王者がアメリカで防衛戦を行なうのは初めての快挙である。
会場はカリフォルニア州ロサンゼルスのバンク・オブ・カリフォルニア・スタジアム。大会の主催はボクシングの世界では有名なゴールデンボーイ・プロモーション。あのオスカー・デラホーヤが仕切るビッグイベントだ。
「会場は2万2000人くらい入るサッカースタジアム。規模は大きい。いまカリフォルニア州では観客はほぼフルに、しかもノーマスクで入れると聞いています」
防衛戦のオファーは今年4月1日、つまりエイプリルフールに届いた。興行スポーツの世界では「予定=未定」が日常茶飯事。藤岡も最初は真に受けなかったが、話を聞いているうちにジョークではないことを理解した。
「どうか途中で消えないオファーであってほしい。そう祈るしかなかった」
昨年、新型コロナウイルスが世界で感染拡大を起こす直前、WBAから「アルゼンチンの選手とアルゼンチンでやってくれ」というオファーが届いた。いわゆる指名試合だ。藤岡は日本から最も遠い国に出かけてまで王座防衛戦をやりたくなかった。
「アルゼンチンでやることは感染のリスクが高いと思ったし、チャンピオンベルトを持っていないと、アメリカには呼ばれない。そう思った矢先に南米ではパンデミックが起こり、話は立ち消えになった。ラッキーでしたね」