オリンピックPRESSBACK NUMBER
IOCバッハ会長(67歳)とは何者なのか? 「ぼったくり男爵」にただ1人クーデターを仕掛けた男の“悲しい末路”
text by
田村崇仁Takahito Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/07/08 11:05
IOCのトーマス・バッハ会長(67歳)とは何者なのか?
IOCと五輪を長年研究するローザンヌ大のジャン・ルー・シャプレ名誉教授による人物評は「気さくな親分肌で改革の達人」。昔から雄弁家で仲間内では「教授」の愛称で呼ばれる。IOCの公表によると、バッハ会長の年間報酬は定額の22万5000ユーロ(約3000万円)。住まいは五輪の総本山、スイス・ローザンヌの駅近くの高台にある1915年創業の五つ星ホテルだ。サマランチ時代から続く「会長公邸」の定宿で、風光明媚なレマン湖が望めるが、バッハ氏によれば「会長職は試練の連続で心休まる日はない」。最大の正念場となる東京五輪は「より速く、より高く、より強く」のモットーに「Together(一緒に)」を加え、コロナ禍の今こそ「人類の連帯」を呼び掛けている。
ただ近年は「ノーベル平和賞も視野に入れているのか?」と周囲に観測されるほど、政治色の濃い「スポーツ外交」に注力する動きも目立つ。
16年リオ五輪で初の「難民選手団」を結成し、18年平昌冬季五輪では北朝鮮に特例参加を認めてアイスホッケー女子で五輪初の韓国と北朝鮮の南北合同チームを実現させた。7月8日に来日後は国連の「五輪休戦決議」の期間が始まる16日に被爆地の広島を訪問し、平和への取り組みを訴える計画だ。
1000分の1秒単位の差が勝負を分けるフェンシングの競技で厳しさを学んだリーダーに、かつてない難局を乗り越える勝算はあるのか――。
世界から数万人規模が集う五輪でコロナ感染再拡大が起こるリスクは消えず、責任の所在は曖昧。「トンネルの先の光に」と繰り返す言葉は世論に響かず、開幕が迫る混迷の祭典は先行き不透明なままだ。