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IOCバッハ会長(67歳)とは何者なのか? 「ぼったくり男爵」にただ1人クーデターを仕掛けた男の“悲しい末路” 

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田村崇仁

田村崇仁Takahito Tamura

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posted2021/07/08 11:05

IOCバッハ会長(67歳)とは何者なのか? 「ぼったくり男爵」にただ1人クーデターを仕掛けた男の“悲しい末路”<Number Web> photograph by Getty Images

IOCのトーマス・バッハ会長(67歳)とは何者なのか?

「反対の人は挙手を!」。バッハ会長が総会で重要な議決を諮るとき、笑みを振りまきながら鋭いにらみを利かせて賛否を問う手法はまさに「サマランチ流」だ。今、歯に衣着せぬ発言で忖度なしに異論を唱えられるのは最古参の「ご意見番」、79歳のディック・パウンド委員(カナダ)ぐらい。電子投票でなく挙手で採決する古典的な方式に、IOC委員の1人は「無記名投票ならともかく、面と向かって反対できる人はいない」と打ち明けた。

 日本の情報を集約するパイプ役は国際体操連盟(FIG)会長の渡辺守成委員。脇を固める要職には競泳五輪金メダリストのカースティ・コベントリー選手委員長(ジンバブエ)ら信頼を置く女性の登用も目立ち、15人の理事中5人が女性だ。

 最近「バッハ色」が顕著に出た例は32年夏季五輪の開催地選考だろう。会長が自ら五輪改革で新設した「将来開催地委員会」でオーストラリアのブリスベンを選び、開催11年前という異例の早さで事実上の“一本釣り”をした。同じ弁護士資格を持つIOC副会長の側近で、東京五輪のジョン・コーツ調整委員長(オーストラリア)との蜜月があるとの見方もささやかれる。にもかかわらず、選考の透明性を疑問視する不満が内部から表立って上がらないのは、実権を掌握していることの裏返しでもある。

年俸は約3000万円、5つ星ホテルに住む日々

 サッカーに熱中した少年時代、毎日擦り傷が絶えないバッハ少年に手を焼いた両親の勧めでスポーツクラブに入り、6歳でフェンシングと出合った。当時は「サッカーがやりたくて泣いて拒んだ」と笑うが、小柄ながらカウンター攻撃を得意技として五輪金メダリストになった「剣士」は、国連を上回る206カ国・地域が加盟するスポーツ組織を束ねるトップにまで上り詰めた。

 人生の転機は東西冷戦下で米国や日本など西側諸国がボイコットした1980年モスクワ五輪にある。バッハ氏は当事、西ドイツの選手委員長として公開討論会で五輪参加を訴えたが、夢を絶たれ「政治に対するスポーツ界の無力さを痛感した。次の世代にこの屈辱を味わわせたくないと思ったのが私の出発点」と語る。

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