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【21歳に】池江璃花子の肉体・心理面は何がスゴいのか 元五輪スイマー伊藤華英が「信じられない」と語ることとは?
text by
伊藤華英Hanae Ito
photograph byYUTAKA/AFLO SPORTS
posted2021/07/04 11:00
競泳日本選手権、100mバタフライで優勝して涙と笑顔を見せた池江璃花子
今大会泳いだレースは計11本。100mバタフライの翌日に池江選手は「意外と元気です」といった感じで話していてビックリしたのですが、スタミナ面でも思っている以上の力を発揮してくれた印象です。
泳ぎながら調子を上げられるワケ
多くの種目をこなす方がいいのか、種目を絞って力を出す方がいいのか――この選択はどのスイマーも向き合わなければならないもので、今大会では萩野(公介)選手が種目を絞っていましたし、松元選手はオリンピックのリレーを辞退して200m自由形にフォーカスしています。もちろんこの選択も的確だった一方で、池江選手は泳ぎながらコンディションを整えていった印象です。
レースの本数がかさむと、どうしても水と身体の感覚にズレが起きてしまいがちです。私の経験談なのですが、キックをしても肌の繊維がない感じで……ちょっとわかりづらいですかね(笑)。身体に水が絡まない感覚に陥るのです。水面でのボディポジションが下がってしまう分だけ、身体に抵抗が生まれるのかな、と感じていました。
それなのに池江選手は長いブランクを感じさせない泳ぎで、不安視されたスタミナ面でも泳ぎ切れることを証明しました。ここまでに至る練習で4種目ともに好タイムが出ていたからこそ、すべてを泳ぎ切る決断ができたのはもちろんですし、大会前に挙げた「肉体の柔軟性」などから生まれる滑らかな泳ぎがあったからこそ、4冠という最高の結果がもたらされたはずです。
何より、池江選手の素晴らしい泳ぎによって日本選手権の雰囲気がすごくグッとよくなりましたし、やっぱり他のスイマーも刺激を受けたんじゃないかなと思いますね。そういった意味で、彼女の持つ力の大きさを強く感じられたこと。それが一番の大きな収穫だったのではと考えています。
(構成/茂野聡士)
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