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「努力は必ず報われる」池江璃花子、復活優勝&五輪内定… 15歳だった“5年前の4月4日”も鮮烈な泳ぎで涙があふれた
posted2021/04/05 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
KYODO
2021年4月4日、池江璃花子が競泳日本選手権の女子100mバタフライ決勝で57秒77の記録で3年ぶりの優勝を果たし、400メートルメドレーリレーの東京五輪代表に内定しました。白血病を克服し、偉業を成し遂げた稀代のスイマーは感激の涙を流し、「自分がすごく自信なくても、努力は必ず報われるんだなと思いました」と語りましたが、5年前の同じ日にも快挙を達成しています。その記事を再公開します(初公開:2020年4月4日)
今なお、その衝撃は忘れがたい。
2016年、4月4日から10日にかけて行なわれた競泳日本選手権での池江璃花子の泳ぎは、鮮烈のひとことに尽きる。
この大会は、同年のリオデジャネイロ五輪代表選考会を兼ねていた。
前年、14年ぶりに中学生として世界選手権代表選手となり注目を集めた池江は、高校1年生となって迎えた大会で、期待に違わぬ、いや、それにはとどまらない成長を示した。
4月4日の大会初日、100mバタフライ準決勝。午前中の予選を通過して迎えたこのレースで、池江は57秒55、日本新記録(当時)をマークし決勝に進む。
翌日の決勝。スタートから頭1つ抜け出す。50mのターンではただ1人、26秒台をマークし、前日の日本記録を0秒17上回るペースで泳ぐ。
終わってみれば57秒71、日本記録更新こそならなかったが、五輪代表選考基準である派遣標準記録を0秒06上回り、オリンピックの切符をつかんだのである。
優勝インタビューでも止まらない涙
掲示板を目にしたときプールの中で溢れた涙は、優勝インタビューでも止まらなかった。
「もう、とにかく……」
そのあとはもう、言葉にならなかった。
それでもなんとかこらえるように、ようやく絞り出した。
「派遣標準を切ることだけをずっと目標にしてきたので」
バタフライ決勝は、実はこの日の3レース目だった。先に200m自由形の予選と準決勝を泳いだあとだった。
にもかかわらず、疲労をものともせずに五輪切符を手にしたのである。