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“レジェンド”ロマチェンコはなぜ中谷正義を選んだのか? 「なかなか倒れなかったことでも驚きはしなかった」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2021/06/30 17:02
元OPBF東洋太平洋ライト級王者の中谷正義(帝拳)は元3階級制覇王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に9回TKO負けを喫した
ロペスに善戦の末に判定負けを喫したのに続き、昨年12月にはラスベガスで強敵フェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)に9回TKO勝ち。一時はスター候補と目された選手から初回、4回と2度のダウンを奪われながら、終盤に逆に2度のダウンを奪い返すという映画のような大激闘を制して名を挙げたのだった。
過去3戦ではロペス、ベルデホ、ロマチェンコというビッグネームと連戦。これほどハイレベルのマッチメークを経験してきた選手は世界中を探してもほとんどいない。
「日本人はウォリアー。彼らは最後まで諦めず、立ち続けるものだから、中谷がなかなか倒れなかったことでも驚きはしなかった」
試合後、普段は尊大さを感じさせるロマチェンコが残したそんな言葉は単なるリップサービスではなかったはずだ。サイズ、タフネス、ハートの強さゆえ、米リングでも名を馳せた中谷の商品価値は消えていない。次戦はより厳しい条件になるかもしれないが、ロマチェンコに完敗の後でも、依然として「世界タイトル戦まであと1勝」の位置にいることにも変わりはない。
ラスベガスは “セカンドチャンスの街”
今も昔も、ラスベガスとは人生を変えたい人々が一世一代の勝負のために訪れる街。6月26日、そんな砂漠の不夜城で迎えたキャリア最大の大一番で、中谷は自らのキャリアと日本のボクシング史を変えることは叶わなかった。だからといって、これで物語が終章を迎えたとは限らない。
ラスベガスは “セカンドチャンスの街”でもある。一度ゆっくりと身体を休めた上で、中谷にはまたアメリカのリングで暴れて欲しいと願っているボクシングファンは日本人以外にも少なからずいるはずである。