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レッドブル・ホンダがメルセデスをねじ伏せ、30年ぶりの3連勝! ライバルに新エンジンと勘違いさせた速さの秘密とは
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2021/06/24 06:01
2ストップ作戦が的中したフェルスタッペンは、メルセデスをコース上で抜き去って勝利。強さをまざまざと見せつけた
完敗したハミルトンは「新しいPUはスペックが違うのか、ストレートでは追いつけないほど速かった」と脱帽。チーム代表のトト・ウォルフも「彼らはPUで大きな前進を遂げた」と、異口同音にホンダのPUを絶賛した。
しかし、これを聞いたホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクター(TD)は、冷静にこう語った。
「今回の2基目のPUについては、信頼性に関わるところに一部改良が入っていますが、レギュレーションを守らなければならないのでパフォーマンスが向上しているということは一切ありません。だから、ライバルたちの『ホンダには勝てなかった』という言い方は間違っていて、正しくは『レッドブル・ホンダに勝てなかった』という表現です」
F1のPUには使用制限があり、ICE、ターボ、 MGU-H、MGU-Kの4つの構成部品に関しては年間3基までしか使用することができない。それを超えると、グリッドペナルティが科せられる。
ただしコロナ禍を考慮して、PUの開発は2020年から2021年にかけて1回までとなっており、今シーズン、新骨格のPUをすでに投入したホンダは、新たにハードウェア面を改良することはできない。
つまり、フランスGPにホンダが投入した2基目のPUは、性能面ではそれ以前に使用していた1基目とハードウェア的には同じスペックだった。
フランスGPのマシンが速かった理由
では、なぜハミルトンをはじめ、メルセデス陣営はホンダの性能が上がったと感じたのか。レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーがこう説く。
「PUを改良することはできない。だから、我々はより薄いリアウイングをこのポール・リカールで使用した。それが我々の直線速度が良かった理由だ」
直線スピードを決めるのは、PUの馬力だけではない。そのPUを載せた車体の空気抵抗も大きく影響する。レッドブルがフランスGPで使用したリアウイングはライバルに対して非常に薄く、空気抵抗が小さかった。