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レッドブル・ホンダがメルセデスをねじ伏せ、30年ぶりの3連勝! ライバルに新エンジンと勘違いさせた速さの秘密とは
posted2021/06/24 06:01
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
忘れられない記者会見がある。
2017年の第1戦オーストラリアGPの開幕前日に、国際自動車連盟(FIA)が主催した合同記者会見だ。
会見に出席したのは、ダニエル・リカルド(レッドブル・ルノー)とセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)、そしてフェルナンド・アロンソ(マクラーレン・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)だった。
この会見で、ある記者から、こんな質問がとんだ。
「F1のオーナーに期待することはなんですか?」
リカルドが「ラスベガスでのレース」と先陣を切ると、ドイツ人のベッテルが「(16年を最後に一旦カレンダーから姿を消した)ドイツGP」と言ったのに続いて、ハミルトンが「マイアミでのレースかな」とかぶせて会見を盛り上げた。
すると司会者が黙っていたアロンソに「フェルナンドはどうですか?」と意見を求めた。アロンソはこう言った。「(性能が)平等なエンジン」
この年、アロンソが走らせていたのはホンダのパワーユニット(PU)で、パフォーマンス面でも信頼面でもライバルたちに後れをとっていた。開幕前のテストでそれが露呈していたため、アロンソは皮肉をこめて、そう答えたのだった。すると隣に座っていたハミルトンがこう突っ込んだ。
「でも、ホンダはなしね」
ハミルトンはすぐに冗談だと言ったが、会場はざわつき、重い雰囲気に包まれた。
4年後の圧勝劇
あれから4年。第7戦フランスGPにホンダは今シーズン2基目のPUを投入した。過去2回のフランスGPで圧倒的な速さを披露していたのはメルセデスだったが、今年はホンダのPUを搭載したレッドブルがポールポジションを獲得。レースでも残り2周でメルセデスをコース上でオーバーテイクして、ライバルをねじ伏せた。