F1ピットストップBACK NUMBER

予選16位から3位表彰台へ…サンパウロGPのフェルスタッペンに驚異的な速さをもたらしたレッドブルのエンジニアたちの決断

posted2025/11/13 17:00

 
予選16位から3位表彰台へ…サンパウロGPのフェルスタッペンに驚異的な速さをもたらしたレッドブルのエンジニアたちの決断<Number Web> photograph by Getty Images / Red Bull Content Pool

ブラジルGP決勝で予選16番手から3位入賞を果たしたフェルスタッペン

text by

尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

PROFILE

photograph by

Getty Images / Red Bull Content Pool

「F1ドライバーがみんな同じマシンでレースしたら、誰が勝つか?」

 長らくF1の世界で囁かれている疑問だ。

 F1直下のFIA-F2や日本のスーパーフォーミュラ、さらにアメリカのインディなど多くの世界のフォーミュラレースは、ある特定のメーカーが製造したマシンでレースする。

ADVERTISEMENT

 これに対してF1は、レギュレーションでマシンを独自にデザイン・製造しなければならないため、チームによって性能が異なる。結果、ほかのカテゴリーと比べてドライバーの腕の差がわかりにくく、「もし全チームが同じマシンだったら……」という疑問がつきまとうのも当然といえる。

 その点において、今年のサンパウロGPは非常に興味深いレースとなった。中心にいたのはマックス・フェルスタッペン(レッドブル)だった。

 ドライバーズ選手権3位でマクラーレン勢を追走するフェルスタッペンにとって、残り4戦となったサンパウロGPは落とせない一戦だった。しかし、フェルスタッペンのマシンは走りはじめから表面がデコボコしているバンピーな路面に苦しんでいた。

 サンパウロGPはスプリントが開催されるため、練習走行は金曜日に1回しか行われない。フェルスタッペンはフリー走行後に行われたスプリント予選までに十分なセットアップを見いだせず、6位に終わった。

エンジニアの選択

 だが、スプリント予選開始とともにセッティングを変更できないパルクフェルメ・ルールが適用されるため、チームはスプリント予選で18番手だったチームメートの角田裕毅をピットレーンからスタートさせる決定を下した。そうすることでセットアップの変更が可能となり、角田のマシンは車高とリアサスペンションの硬さをフェルスタッペンと異なる数値に変更してスタートすることになった。

 フェルスタッペンは土曜日のスプリントでもハンドリングに苦しみ、4位に終わった。その一方、パルクフェルメ・ルールはスプリントのスタートとともに解除され、予選までにマシンのセッティングが変更できることになる。フェルスタッペンの担当エンジニアたちはこのままではマクラーレン勢に太刀打ちできないと判断し、ドラスティックな変更を決断した。

 そのひとつが、フロアを旧型スペックに交換することだった。フロアはディフューザー機能に大きく関係する車体底部最大の空力パーツで、レッドブルは前戦メキシコGPから最新スペックを投入していた。サンパウロGPでは角田のマシンにも最新のフロアが使われたので、予選では角田が最新スペック、フェルスタッペンが旧型という珍しい現象が起きることとなった。さらにフェルスタッペンを担当するエンジニアたちは、角田の走行データを確認したうえで、車高とリアサスペンションの硬さを大幅に変更する決断を下した。

【次ページ】 モータースポーツの速さとは

1 2 NEXT
#マックス・フェルスタッペン
#角田裕毅
#レッドブル

F1の前後の記事

ページトップ