「そのサポート環境ですよね。陸上は自分の体が資本ですし、体力勝負のところがあるのでそこに戻せるかということも大きいですが、やはり出産してもなお競技を続けたいと思える環境や雰囲気があるのかどうかが大切だと思うんです。日本では前例がほとんどないですし、周囲もどう対応したらいいのか分からないことも多い。でも、寺田さんが出産後も競技を続けて日本記録を更新する姿は、サポート体制作りの大きなキッカケになるんじゃないかなと」

　出産を経て競技に復帰し、結果を出した選手は、寺田もそうだが、赤羽有紀子も有名だ。26歳で長女を出産後、1カ月で練習を再開し、北京五輪では5000mと10000mに出場した。中里麗美は、赤羽が出産後も走り続ける姿に刺激を受け、区切りをつけるべくダイハツをやめて引退。長男を出産した後、マラソンの練習を再開し、ママとして輝く姿を息子に見せるために競技に復帰している。

　卜部に「寺田のように、出産を経てキャリアを歩むイメージはつくか？」と問うと、少し考えてストレートにこう答えてくれた。

「今のところ、自分はどうかと考えると想像ができないです。まだ、社会全体としてサポートの雰囲気も少ないですし､前例が少ない分､出産を経て復帰するまで何がどのような課題となってくるのかも想像し難い｡先の姿が想像できないと、そうしたいとも思えないので……。やはりサポートする環境や雰囲気ができると、安心して陸上に戻ってこれると思うので少しでも改善していきたいですね」

©Asami Enomoto

　女性アスリートが長く競技を続けていくため、また女性の社会進出の促進という意味でも妊娠・出産・育児のサポートは、実業団はもちろん陸連もより早く、深く考えていく必要がある。

女性アスリートを狙う「性的画像問題」をどう考える？

　一方で、女性アスリートを守る動きはかなり定着してきている。

　陸上に限らず、ビーチバレーなどの女性選手が活躍するシーンで性的な目的で写真を盗撮して投稿したり、選手本人に送り付けてくる人に対して注意喚起を促し、警察と共同で防止対策を講じるようになった。

「私は、SNS上で違和感を感じたものには関わらないようにしています。でも、他選手から被害にあったという話をよく聞きますし、そういう嫌な思いをした時に相談できる場、環境があることが大事だと思います。最近は陸連やJOCが動いてくださって、個人的にはだいぶ改善されてきたと思います」

機能性などを考慮して女性アスリートが着用する「セパレート型」のユニフォーム姿なども、性的画像撮影の標的にされてきた　©AFLO

　確かについ先日も、女性アスリートの下着が透けて見える動画をインターネットで販売したとして、会社員の男性が逮捕されたり、そもそもコロナの影響で大会が無観客で開催されていることもあって、ネット上で被害にあったというニュースは以前ほど出てきていない。

　ただ、この性的画像問題が抱える難しさはそれだけではない。

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