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26歳“現役ランナー”卜部蘭が語る、性的画像の難しさ「鍛えられた肉体美は“知ってもらうきっかけ”にもなる」
posted2021/06/25 11:01
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Asami Enomoto
自分が輝くために、そして陸上と中距離種目をより多くの人に知ってもらうために、東京五輪出場を目指す卜部蘭は、クラブチーム「TWOLAPS」と積水化学工業女子陸上部で活動を続けている。そのなかで、競技活動以外についてもあれこれと考えを巡らしているが、女性アスリートに関わる課題や問題についても最近考えることが増えた。
第一線で活躍する選手は「陸上界の女性アスリート問題」をどう考えているのか? また、陸上界の発展のために参考にしているという、“あるJリーグクラブへの愛”も語ってくれた(全2回の2回目/#1から続く)。
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チームメイトの新谷仁美が女性の体、生理などについて積極的に発言をしているが、卜部は女性が競技を続けていく上で特に難しいと言われている“ある問題”を改善するべきだと考えている。
そのひとつが、産後のアスリートの復帰だ。
「これは日本だけに限らず、世界的に見てもそうなんですが、出産を経て、競技を続ける人の数が非常に少ないんです」
そう言われてみると確かに女性アスリートの場合、妊娠して、出産し、子育てに入ると、もう競技者としては“上がり”のような風潮がある。
「ほんと、そうなんです。日本で女性の社会進出が改めて問われている中で、アスリートが育児を挟んで復活するために、もっとサポートできる環境が生まれて、理解が広がっていけば、陸上に限らず、産後も競技を続けたい人、戻りたい人がけっこう出てくると思うんです」
「いろんな人の思いがあって生まれた1枚だと思うんです」
そう願うなかで、卜部には最近、忘れられない印象的なシーンがあったという。
「寺田(明日香)さんが織田記念で日本記録(100mハードル)を出した時、娘さんとタイム表示板の前で写真を撮られていたのがすごく素敵だなって思ったんです。あの写真は一度陸上から引退されてお母さんになり、ラグビーに転向してまた陸上に戻ってきた寺田さんの努力と旦那さんやチームのサポート、お母さんが競技している姿を格好いいと思う娘さん、それに『一緒に写真撮りなよ』と声をかけてくれた陸連の方、メディアの方、そういういろんな人の思いがあって生まれた1枚だと思うんです。こういう思いが広がっていくと産後のランナーに優しい環境が生まれて、諦めずに走ろうという人が出てくると思うんです」
女性アスリートの産後復帰「前例がほとんどない」
現実的には、女性が出産するとホルモンバランスが変わったり、体型を含めて体に変化が生じるなど、アスリート基準の体に戻すまでに相当の時間が必要となる。さらに、戻ったとしてもパフォーマンスを出産前に戻せるかどうか不安な気持ちと戦わなければならない。復帰を実現していく中で簡単に解決できない非常に重たい問題があるのだ。