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サイ・ヤング賞投手たちの異常なデータ…「悩みではあった」ダルビッシュも指摘する“不正投球問題の実情” 

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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posted2021/06/12 11:02

サイ・ヤング賞投手たちの異常なデータ…「悩みではあった」ダルビッシュも指摘する“不正投球問題の実情”<Number Web> photograph by Getty Images

6勝2敗、防御2.28(6月10日時点)と今季も好投を続けるダルビッシュ有。オンライン会見で不正投球問題にも言及した

 米メディアは当初「セメント材質の接着剤」と表現していたが、それが『スパイダータック』と呼ばれる、パワーリフティングの選手がバーベルを持ち上げる際に使用する強力粘着剤であることがわかってきた。

 例えば、筆者の取材中にこんなことがあった。あるサイ・ヤング賞投手が投げたボールがファウルとなり飛んできた。手にしてみると“ベタベタ”で石鹸で洗わなければ取れないほどの粘着力だった。また、ブルペンで準備する投手が一生懸命にボールをこねていた。投手はそのボールを手の平に擦り付け、下に向ける。それでもボールは張り付いたまま。準備完了とばかりに投球練習を始めた。

「容疑者」の筆頭はあのサイ・ヤング賞投手?

 目にしたものが『スパイダータック』付着のボールか定かではない。現在、使用を疑われている『容疑者』の代表格はヤンキースのエース、ゲリット・コールと昨季のサイ・ヤング賞右腕、ドジャースのトレバー・バウアーだ。

 ふたりの近年の直球のスピンレート平均値は表の通りに推移している。

 ともに2015年から2017年はスピンレートに大きな変化はないが、2018年を境に上昇カーブを描き出している。上昇数はコールで約400、バウアーは600を超える。

「これ(強力粘着剤)さえあれば最高の投手になれる」

 2018年、バウアーは当時コールが在籍していたアストロズを名指しし「投手陣で強力な粘着剤を使用している疑いがある」と言い放った。19年には「これ(強力粘着剤)さえあれば最高の投手になれる。だが、俺にはモラルもある」とも発言し、機構がルールを定めないことに怒りを表していた。結局は手を染めている投手がいる以上、やらないのは損とばかりに自身も使用した『確信犯』という見方がある。

 コールは6月3日、レイズ戦で5回5失点で敗戦投手となると、ニューヨークのメディアから『スパイダータック』の使用を聞かれた。この直球に彼はしどろもどろとなった。

【次ページ】 使用を問われたコールは「うーん……」

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